Column コラム
| アカデミー賞に関する管理人Yoshiの雑文です。 |
| last update: February 21, 2003 |
| ■第75回アカデミー賞ノミネーションを見て思うこと （2002.02.21） |
| ２月21日に第75回アカデミー賞のノミネーションが発表になりました。今回はそれを見て思うことを少々…。 ［作品賞］ 予想通りのタイトルが並びました。最後の席はどの作品が滑り込むのか興味津々だったのですが、『戦場のピアニスト』でしたね。やはりユダヤものはオスカーでは強いです。『アバウト・シュミット』『アダプテーション』が漏れてしまったのは残念ですが、今回は強豪揃いだったので仕方ないでしょう。 ［監督賞］ 作品賞と被ることが多いので納得できるものなのですが、応援していたピーター・ジャクソンが落選したのは残念でした。それにしても、そのジャクソンを押し退けて候補入りしたのがペドロ・アルモドヴァルというのが、驚きです。たしかにアルモドヴァルはオスカーのお膝元、ロサンゼルス映画批評家協会賞を受賞しているのですが、まさか突然浮上してくるなんて！個人的に好きな監督なので、応援したいところです。 ［主演男優賞］ 前哨戦の後半に突如浮上してきたリチャード・ギアは、結局ノミネートされませんでした。ゴールデン・グローブ賞を受賞し俳優組合賞候補にも入ったのに、本人はさぞかし残念がっていることでしょう。数年前にオスカー・プレゼンターを務めたとき、政治発言をしたことを会員たちはまだ根に持っているのでしょうか。それとももともと彼にある偏見の影響でしょうか。ヴェテランがひしめく中、エイドリアン・ブロディのフレッシュさが目立ちます。 ［主演女優賞］ ビッグ６のうち、落選したのはメリル・ストリープでした。でもストリープは助演部門に入っているので文句はないでしょう（いや、しかしＷノミネートは自信満々だったはず）。例年になく華やかなスター女優が揃いました。しかも全員オスカー受賞経験なし。サルマ・ハエックを除いた４人の争いになりそうです。 ［助演男優賞］ デニス・クエイドがまさかの落選という衝撃が走りました。対象作品の『エデンより彼方に』の息切れが響いたのでしょうか。ノミネートされた５人は実力派揃い。誰が受賞しても文句はない演技巧者ばかりです。全員に受賞して欲しいと思えるなんて、なかなか充実したカテゴリーといえるのではないでしょうか。 ［助演女優賞］ やはりミシェル・ファイファーは候補に届きませんでした。「ラブ・フィールド」以来オスカーとは縁のないファイファー、ここらへんで候補入りしたかったところでしょう。クイーン・ラティファを除く４人にチャンスがありそうです。 ［ノミネート数］ 『シカゴ』13部門、『ギャング・オブ・ニューヨーク』10部門、『めぐりあう時間たち』９部門、『戦場のピアニスト』７部門と続いていく中、『ロード・オブ・ザ・リング 二つの塔』と同じ６部門にノミネートされたのが『フリーダ』です。こうしてみると、今年のキーワードが見えてきます。「女性」です。『シカゴ』『時間たち』『フリーダ』、そして『エデンより彼方に』等、女性が主人公の映画が健闘しているのです。受賞者はそのあたりを意識した選考になるような気がしてなりません。 |
| ■主演女優賞が面白い理由 （2003.01.17） |
| 第75回アカデミー賞で個人的に面白いなぁと思っている部門は、主演女優賞です。ビッグ６と呼ばれるトップグループがあり、それぞれがたしかに候補入りしそうな唸りを抱えているからです。ご存知の通り、ノミネートされるのは５人のみ。必ずひとりは落選します。それにビッグ６以外から伏兵が指名を獲得することがないとは言えません.。少数で争われる部門ですが、それゆえ予想のしがいがあるのです。 ビッグ６は次の６人です。『フリーダ』のサルマ・ハエック、『めぐりあう時間たち』のニコール・キッドマン、『運命の女』のダイアン・レイン、『エデンより彼方に』のジュリアン・ムーア、『めぐりあう時間たち』のメリル・ストリープ、『シカゴ』のレニー・ゼルウィガー。このうちムーアは前哨戦総なめの状況から見ても、ノミネート確実。実質５人が４つの席を争うことになります。 １．役柄 オスカーは実在した人物を演じると候補入りしやすいです。それに当たるのがハエック（フリーダ・カーロ）とキッドマン（ヴァージニア・ウルフ）です。どちらも製作当初から候補入りは確実と見られていましたが、実在の人物役でふたりも候補入りさせるでしょうか。どちらかで迷ってもおかしくありません。このふたりならキッドマンの方が有利でしょう。逆に不利な役柄なのがレインです。不実な妻という役柄は、良妻好きの会員の手を凍らせるでしょう。賞レースでは健闘していますが、オスカーには相応しくないとみなされる可能性が捨て切れません。 ２．ノミネート歴 最多ノミネートを狙うストリープは、今回候補入りすれば世界で最も尊敬されている女優キャサリン・ヘップバーンの記録を抜くことになります。これはハリウッドの映画人にとって複雑な思いを抱かせること必至です。なぜならヘップバーンは今も存命中。この大女優の記録を簡単に抜かせるでしょうか。今回ストリープは助演女優賞部門で候補入りが確実視されていますが、会員は主演女優賞では投票しないでバランスをとりたいと思うかもしれません。 また今年候補入りすれば２年連続となる者が二人います。キッドマンとゼルウィガーです。二人とも候補入りすれば新鮮味が薄れることは否めず、そのあたりが票にどう影響を及ぼすでしょうか。この二人ならば、ドラマティックなキッドマンの方に分がありそうです。 ３．バランス 今回女優部門を混乱させているのは、女優が多数出演する作品が２本あるからです。『シカゴ』と『めぐりあう時間たち』です。前者にはゼルウィガーとキャサリン・ゼタ＝ジョーンズ（助演）が、後者にはキッドマン、ムーア（助演）、ストリープが出演しています。もしこの５人がすべて候補入りした場合、主演助演含めて10しかない席の半分が埋まってしまうことになります。全員を候補入りさせるでしょうか。ただ、今回はありがたいことにムーアは『エデンより彼方に』、ストリープは『アダプテーション』も抱えています。会員が、ならばムーアとストリープは『めぐりあう時間たち』では投票をやめにしようと考えてもおかしくないでしょう。そうすることで『シカゴ』から二人、『めぐりあう時間たち』から一人と２作品からの候補入りを少なくすることができます。『めぐりあう時間たち』の３女優はいずれも評価が高いですが、この作品はキッドマンを代表させる、そうすればバランスがとれるのです。なお、ゼタ＝ジョーンズは主演のカテゴリーに入る可能性も捨て切れませんが、そうなった場合は、ゼルウィガーに候補落ちの危機が訪れるでしょう。『シカゴ』で最も評価されている のはゼタ＝ジョーンズで、配給会社も彼女を中心にキャンペーンをしているからです。 ４．配給会社 驚いたことにビッグ６のうち、４人がミラマックス・レディです（『めぐりあう時間たち』はパラマウント共同配給）。オスカーに強いミラマックス作品からエントリーを狙うのは、ハエック、キッドマン、ストリープ、ゼルウィガー。もし『エデンより彼方に』で候補確実のムーアに加え、この４人が指名されると、主演女優賞は５人中４人がミラマックス・レディ。ムーアが『めぐりあう時間たち』に出演していることを考えて彼女もミラマックス・レディとみなすと、５人全員がミラマックス・レディとなるのです。これは現実的ではない気がします。オスカーはもともとハリウッドのメジャー映画を称えるために始まったものですし、賞狙いの作品ばかりを製作するインディーズ・スタジオのミラマックスに対して反感を持っている者も少なくないと言われているからです。そうすると有利なのが、レインです。『運命の女』はメジャースタジオ、20世紀フォックスの作品です。６人の中では一人だけメジャースタジオの大規模作品。目立つのは必至です。フォックスがレインのキャンペーンに力を入れているのも心強いです。ミラマックス・レディたちはどうしてもキャンペーンが分散してしまいま すから。案の定、ストリープよりはキッドマンを、ゼルウィガーよりはゼタ＝ジョーンズを、とミラマックス（及びパラマウント）は考えているようです。 ５．公開時期 通常オスカー狙いの作品は年末に封切られますが、なるほどビッグ６のうち５人が、10月から12月に公開された作品からのエントリーです。ただ一人違うのはレインです。『運命の女』は５月にリリースされました。これは不利なことのように思えますが、今となっては強力な武器のように思えます。上半期にリリースされた作品から候補入りを狙えそうなのは、レインだけだからです。『インソムニア』『マイノリティ・リポート』『アバウト・ア・ボーイ』といったオスカーを確実視された作品、出演俳優が次々と忘れられていく中、レインだけはいまだに強い唸りを持っています。それにいくら年末公開作品が強いと言っても、毎年必ず一人は上半期公開作品から指名されるのです。もしレインが候補落ちした場合、おそらく他の主要部門も含めて上半期勢は全滅でしょう。そうしないためにも会員はレインに目をとめるはずです。上半期作品で誰かいなかったかな、そう考えたとき、会員が真っ先に思い出すのがレインであることは確実です。 ６．伏兵 ビッグ６以外で可能性があると思われる女優が二人います。『セクレタリー』のマギー・ギレンホールと『マイ・ビッグ・ファット・ウェディング』のニア・ヴァルダロスです。前者は賞レースでも目立っていてボストン映画批評家協会賞を獲得、後者は今年最大のサプライズヒット作のヒロインです。特にギレンホールは評価されていて、ゴールデン・グローブ賞、俳優組合賞の結果次第では十分狙える位置、ヴァルダロスも作品が候補入りすることがあれば、その勢いに乗ることができそうです。ただ不安なのは、二人ともコメディ作品からのエントリーだということです。今年この部門にはゼルウィガーがいます。ふたりがゼルウィガーを押し退けて候補入りする可能性はあるでしょうか。この３人はゴールデン・グローブ賞で候補入りしていますが、もしギレンホールかヴァルダロスが受賞することがあれば、一気に現実味が増すのですが…。 現時点で主演女優部門の最もスマートなノミネーションは、ハエック、キッドマン、レイン、ムーア、ゼルウィガー。ストリープは助演女優部門に回ってもらうのです。そうすれば、ビッグ６全員がめでたくノミネートされることになります。もちろん、そんなに簡単にうまくいかないのがオスカーで、だからこそ面白いのですが…。 ちなみに現時点での受賞最有力はムーアですが、確実にその受賞確率は低くなってきています。前哨戦で強すぎるからです。賞レース当初からあまりにも強すぎて、オスカー当日には「もういいだろう」という空気が必ず出てきます。一部ではすでに、ムーアを昨年前哨戦を総なめしながらオスカーを逃したシシー・スペイセクに例える論評も出ているくらいです。では今年のハル・ベリーは誰なのか。現時点ではキッドマンかレインということになりそうですが、果たして…。 |
| ■ゴールデン・グローブ賞 ノミネーション予想 （2002.12.15） | |||||||||
２月にオスカーのノミネート最終予想をする前に、肩鳴らしのつもりでゴールデン・グローブ賞の予想をしてみます。しかし、ＧＧ賞こそがオスカーを占うベースとなる賞。今はまだ誰が賞レースに強いのか、噂の段階でしかないため、ノミネーション予想をするのは極めて難しいです。とはいえ、傾向というものがやはりあり、ＧＧ賞ではスター俳優が強いです。外国人記者クラブの面々が投票するので、記者たちになじみのあるスターたちに票が入る確率が高いのです。というわけで、たったそれだけを考慮した（すなわち、ほとんど考えていない）ゴールデン・グローブ賞ノミネーション予想は次の通り。
いくらＧＧ賞だからと言って、エミネムを予想するのは暴挙でしょうかね。いや、でも入ることを願いましょう。アメリカの方ではジェニファー・アニストンの落選を予想している人が多いですが、僕はチャンスはゼロじゃない気がします。TV部門で候補入りするとちょっと難しくなると思いますが、それでも彼女、アメリカではすごい人気ですからね。 あまり考えて予想したわけじゃないですが、色々考えるのはやっぱり楽しいなぁ。 |
| ■各部門のポイント （2002.12.15） |
| 第75回アカデミー賞の各部門の、個人的に見所だと思う部分を少々。 ［作品賞］ 今年はいかにもオスカー好みの大作が３本あります。『シカゴ』『ギャング・オブ・ニューヨーク』『ロード・トゥ・パーディション』です。いずれも賞の匂いプンプンですが、果たしてこの３本をすべてノミネートするでしょうか。実はこの３本には共通点があり、それは「血の流れる時代物」であるということ。すべて候補入りさせれば、似通った作品ばかりという印象が生まれてしまうかもしれません。ですから、この３本のうち、僕はどれかが落とされるような気がします。読めないのが、三部作のうち２番目にあたる『ロード・オブ・ザ・リング 二つの塔』。昨年最多ノミネートを受けた作品ですが、はたして今回も候補入りさせるのか。今回も素晴らしい出来映えという評が続々と届いているので、僕はイケそうな気もしますが…。アメリカでサプライズヒットとなった『マイ・ビッグ・ファット・ウェディング』も不気味です。いくらヒットしたといっても、これはロマンティック・コメディ。これを候補入りさせるでしょうか。ＧＧ賞を獲れば一気に現実味が増すのですが。 ［監督賞］ マーティン・スコセッシが受賞できるかどうか、これに尽きます。アメリカ映画界最高の監督といわれながら、今だオスカー像を手にしてないスコセッシが、ニューヨークの歴史を取り上げたのですから、「今年こそあげましょう」という動きが起こらない方がおかしいでしょう。期待が大きすぎるのが難ですが、たとえ少々粗があったとしてもこれまでの実績を評価してノミネート、そして受賞ということも十分考えられるでしょう。 ［主演男優賞］ 強豪がひしめいている部門です。前評判から言うと、ジャック・ニコルソン、マイケル・ケインが当確ラインに王手をかけている感じ。それをダニエル・デイ＝ルイスが追うという構図が見えてます。エミネムを推す声もありますが、もし候補入りしたらとんでもない快挙。まあそんなことは起こらないとは思いますが…。個人的にはレオナルド・ディカプリオの復活を見たいです。 ［主演女優賞］ 予想するのがいちばん面白い部門です。ジュリアン・ムーアは当確。残り４枠を争う闘いになりそうです。強いと言われているのが、サルマ・ハエック、ニコール・キッドマン、ダイアン・レイン、メリル・ストリープ、レニー・ゼルウィガー。ムーアも含め、６強と呼ばれています。しかし、ここにきてジェニファー・アニストン、マギー・ギレンホール、サマンサ・モートン、ニア・ヴァルダロスが猛烈な追い上げを見せています。この部門については後日、別にスペースをとって書きたいと思います。 ［助演男優賞］ クリス・クーパーとデニス・クエイドの前評判が高く、ほぼ当確。前評判の高かったポール・ニューマンは徐々に印象が薄くなってきている感じです。注目したいのが『ロード・オブ・ザ・リング 二つの塔』のイアン・マッケランとヴィゴ・モーテンセン。昨年はマッケランが候補入りしましたが、今年はモーテンセンという声が徐々に高まっています。個人的にはエド・ハリスとともに応援したいです。 ［助演女優賞］ キャシー・ベイツが当確ラインに王手。僕はミシェル・ファイファーとキャサリン・ゼタ＝ジョーンズを推したいですが、ファイファーの方がやや盛り下がり気味な空気。注目はジュリアン・ムーアが主演女優賞とともにＷノミネーションを受けるかどうか。女優部門は主演も助演も、『めぐりあう時間たち』の３女優のバランスをとるのが難しく、そこを読み解くのが女優部門予想の面白いところでしょう。 |
Past Report -75th Annual Academy Awards-