Column コラム
| アカデミー賞に関する管理人Yoshiの雑文です。 |
| last update: February 07, 2004 |
| ■第76回アカデミー賞ノミネーションを見て思うこと （2004.02.07） |
| １月27日に第76回アカデミー賞のノミネーションが発表になりました。今回はそれを見て思うことを少々…。 ［作品賞］ なんとミラマックスの一押し作品『コールド マウンテン』が落選するという波乱がありました。ミラマックス作品が作品賞候補にならなかったのは、第61回（91年）以来ということです。オスカー会員のミラマックス離れが囁かれ始めてから随分経ちますが、いよいよ現実になってきたのでしょうか。個人的には会社の名前で作品を判断して欲しくない。あくまで公正な評価の結果だと思いたいです。ちなみに、作品賞落ちと言っても、ミラマックスは総合的15ノミネートを勝ち取っていて、賞レースに強いスタジオである事実に変わりはありません。『コールド マウンテン』の席に入った作品は『ロスト・イン・トランスレーション』でした。2003年のインディーズを代表する作品、『アメリカン・スプレンダー』『イン・アメリカ 三つの小さな願いごと』を抑えての候補入りです。ソフィア・コッポラの評価は、我々が思うより高いもののようです。 ［監督賞］ なんと言っても『シティ・オブ・ゴッド』のフェルナンド・メイレレスの候補入りが光ります。前哨戦では地方の批評家協会賞の候補止まりだった彼が、突如浮上したのです。もちろん作品は大傑作、候補入りは当然なのかもしれませんが、ブラジル出身の新進気鋭を選ぶあたり、オスカー会員もなかなか粋なことをするものです。メイレレスは昨年の「トーク・トゥ・ハー」のペドロ・アルモドヴァルの席に入った感が強いです。受賞は極めて難しいでしょうが、頑張って貰いたいです。 [主演男優賞] 予想されたメンバーが並ぶ中、５番目の席は『コールド マウンテン』のジュード・ロウが勝ち取りました。ラッセル・クロウ、トム・クルーズ、ピーター・ディンクレイジらを抑えて、２度目の候補入りです。５人の中では『パイレーツ・オブ・カリビアン 呪われた海賊たち』のジョニー・デップが異色です。ジェリー・ブラッカイマー製作作品、夏公開の娯楽作というハンディを押し退けての初ノミネート。まさか本当に候補入りするとは（しかも助演ではなく、主演）、驚きです。オスカーも少しずつ変わり続けているのかもしれません。 ［主演女優賞］ 監督賞と並び、サプライズの悲鳴が起こった部門です。ニコール・キッドマン、ジェニファー・コネリーをはじめとする強豪を蹴落とし、『クジラの島の少女』のケイシャ・キャッスル＝ヒューズが指名されたのです。ニュージーランドの13歳の少女が、まさか主演に入るなんて、誰が想像したでしょう？撮影当時11歳だった彼女は、この部門のノミネート最年少記録を打ち立てました。おそらくニュージーランドは『ロード・オブ・ザ・リング 王の帰還』と彼女の話題で沸き返っているのではないでしょうか。『イン・アメリカ 三つの小さな願いごと』のサマンサ・モートンも小さなサプライズでした。前哨戦後半ではほとんど目立っていなかったからです。でも彼女の演技は確かに候補に値する素晴らしいものでした。助演部門ならば、もっと納得がいくのですが…。それにしても、今年の主演女優賞は激戦でした。昨年のビッグ６が今年だったら…？ガラッと候補者が入れ替わりそうな気がします。 ［助演男優賞］ 納得の顔ぶれですが、『イン・アメリカ 三つの小さな願いごと』のジャイモン・ハンスゥを予想できた人は少ないのではないでしょうか。下馬評こそ高かったものの、賞レースではほとんど目立ちませんでした。彼の候補入りの影で泣いたのは、『ニュースの天才』のピーター・サースガード、『シービスケット』のクリス・クーパーとウィリアム・Ｈ・メイシー、『ビッグ・フィッシュ』のアルバート・フィニーらです。『ロード・オブ・ザ・リング 王の帰還』のショーン・アスティンの落選も残念でした。『王の帰還』は結局演技部門ではひとりも候補に入れませんでした。日本では『ラスト サムライ』の渡辺謙の候補入りが話題になっています。作品の、そして日本の顔として、堂々と式に臨んでもらいたいところです。 ［助演女優賞］ やはり『ミスティック・リバー』のマルシア・ゲイ・ハーデンはオスカー受けする女優でした。前哨戦の惨敗も何のその、見事２度目の候補入りを果たしたのです。こうなってくると「ポロック ２人だけのアトリエ」のときの再現があるのではないかと想像してしまいます。『砂と霧の家』のショーレ・アグダシュルーの候補入りも意外だと感じる人が多いかもしれません。前哨戦後半は不調だった彼女ですが、実はニューヨーク、ロサンゼルス、オンラインという重要な批評家協会賞を３つも獲得しています。『The Cooler』のマリア・ベロ、『ロスト・イン・トランスレーション』のスカーレット・ヨハンソンらが落選。特にスカーレットは主演作『真珠の耳飾りの少女』とともにゴールデン・グローブ賞、英国アカデミー賞でＷ候補に挙がっていたので、ショックが大きいのではないでしょうか。候補入りするとしたら『ロスト・イン・トランスレーション』だったのですが…。 ［全体を見渡して］ 『ロード・オブ・ザ・リング 王の帰還』が順当に最多11部門で候補に挙がりました。同作が今年の台風の目となることは確実です。技術部門で稼げないゆえノミネート数では目立っていませんが、『ミスティック・リバー』が対抗でしょう。健闘したのは『シティ・オブ・ゴッド』『イン・アメリカ 三つの小さな願いごと』『真珠の耳飾りの少女』、そして『パイレーツ・オブ・カリビアン 呪われた海賊たち』あたりでしょうか。アニメーション映画ながら４部門で候補入りした『ファインディング・ニモ』も高い評価と言っていいでしょう。逆に『ビッグ・フィッシュ』『ラスト サムライ』あたりは予想よりも少ない結果に落ち着きました。『コールド マウンテン』は７ノミネートを勝ち取ってはいますが、物足りない結果と言って良いでしょう。あと今年の傾向としては、アメリカ以外の国の出身俳優が多いことも挙げられるでしょう。基本的に「アメリカ」映画界の祭典ゆえ、他国の映画人（特に英語圏外の俳優）に冷たいオスカーですが、今年はイギリス、オーストラリアはもちろん、ブラジル、ニュージーランド、イラン、西アフリカ、南アフリカ、そして日本からも候補入り…。映画はアメリカ人のためだけの娯楽ではないことを考えると、良い傾向なのではないでしょうか。 サプライズだらけのノミネーションですが、ひとつ心配なことがあります。最終受賞者が本命ばかりになってしまうのではないかという危惧があるのです。前哨戦でも重要な意味を持つブロードキャスト映画批評家協会賞、ゴールデン・グローブ賞ドラマ部門の受賞者がまったく同じなのです。アカデミー賞まで同じ結果だったとしたら、少々寂しく感じるでしょう。ノミネーションに負けないビッグサプライズがあって欲しいと思わずにはいられません。 |
| ■渡辺謙はノミネートされるのか （2004.01.15） |
| 今年のアカデミー賞は、いつになく日本でも高い注目を集めています。日本の名優渡辺謙が、『ラスト
サムライ』で助演男優賞候補を期待されているからです。実際のところ、彼がノミネートされる可能性は、どれくらいあるのでしょうか。 『ラスト サムライ』がアメリカで公開されたとき、渡辺が絶賛されたのは、事実です。メディアは渡辺を「和製ユル・ブリンナー」だとか「トム・クルーズを遥かに凌ぐ存在感」だとか、褒め称えたのです。実際、渡辺が演じた役柄は作品の魂とも言えるもので、その点で儲け役とも言えるでしょうが、それを差し引いても渡辺の演技は素晴らしいものでした。 ところが、そういう評価がそのままアカデミー賞に繋がらないのが難しいところです。アカデミー会員は保守的です。ハリウッドという巨大な「組織」の中にポッと出てきた役者をなかなか認めることをしないのです。 これまでの発表された各賞で渡辺は、ゴールデン・グローブ賞、ゴールデン・サテライト賞、ブロードキャスト映画批評家協会賞、ワシントン映画批評家協会賞、フェニックス映画批評家協会賞で候補に挙がっています。立派なことです。特にゴールデン・グローブ賞とブロードキャスト映画批評家協会賞は重要な賞で、この２賞で候補に挙がったのは、大きな強みです。 が、渡辺が数多くある映画賞でひとつも受賞を果たしていないのも事実です。同じ部門ではティム・ロビンスがほとんど当確。残り４つの席を争うことになるわけですが、アレック・ボールドウィン、ピーター・サースガード、ベニチオ・デル・トロ、ジャイモン・ハンスゥ、ショーン・アスティン、ビル・ナイ、ユージーン・レヴィといった受賞を果たしているツワモノたちが大勢います。また、渡辺と同じく受賞はしていないもの、アルバート・フィニー、ウィリアム・Ｈ・メイシー、ポール・ベタニーらも相当強力だと言われています。今年はウィーク部門と思われた助演男優賞部門ですが、票が割れ、次々と有力者が浮上、もはや誰が来てもおかしくない状況になってきたのです。 加えて『ラスト サムライ』がイマイチ賞レースで目立っていないのもマイナスです。ゴールデン・グローブ賞では作品賞候補を逃してしまったほどです。現在『ラスト サムライ』は作品賞候補の６、７番手といった位置にいます。なんとか作品の後押しを得たいところですが、これもまた厳しいかもしれません。 とはいえ、マイナス情報ばかりではありません。発表されたブロードキャスト映画批評家協会賞で、渡辺は受賞のロビンスに次ぐ二番手に入ったのです。票差は５票だったそうです。この結果は何を意味しているのでしょう。間違いなく渡辺の演技は評価されているということです。ただ、今年は有力者が多数いて、何が起こってもおかしくないのです。おそらく候補は小差で決まるでしょう。 日本のマスコミはもはや渡辺が候補確実のような騒ぎようですが、それはまだ早いでしょう。でも悲観する必要もありません。彼がハリウッドで認められたのは間違いないのです。 現在候補入りする確率は50パーセントぐらいでしょう。日本から渡辺が候補入りすることを祈ります。 |
| ■ゴールデン・グローブ賞 ノミネーション予想 （2003.12.15） | |||||||||
アカデミー賞と並ぶ大きな映画賞といえば、ゴールデン・グローブ賞です。外国人記者クラブのメンバーの投票により決まるこの賞は、アカデミー賞の行方を占う賞として近年ますます注目されています（ただし、スター俳優が強くて、オスカー予想の参考にならないとの声もあります）。オスカーの最終予想をする前に、まずＧＧ賞を肩ならしのつもりで予想してみました。次の通りです。
傾向を考えてスター重視の予想をしてみましたが、いかがでしょう？応援している『ビッグ・フィッシュ』を作品賞、主演男優賞に入れなかったのは、ドラマ部門、ミュージカル／コメディ部門のどちらに入るか、情報が混沌としているためです。ミュージカル／コメディ部門ならば、確実に候補入りすると思うのですが…。また、『ロスト・イン・トランスレーション』のスカーレット・ヨハンソンが主演に繰り上がるという噂もあります。 いずれにせよＧＧ賞候補が発表になると、アメリカ映画界は一気に賞レースムードが高まります。あれこれ考えながら、楽しみましょう。 |
| ■各部門のポイント （2003.12.11） |
| 第76回アカデミー賞の主要６部門の、個人的に見所だと思う部分を少々。 ［作品賞］ 今年はこれぞアカデミー賞好みの映画という作品が少ないのですが、あえてピックアップするならば『コールド マウンテン』に会員好みの匂いが漂っています。南北戦争を背景にした大河ロマンであるこの作品は、ミラマックスが最もお金をかけてプッシュすると思われます。ただ、出来映えが芳しくないという噂もまことしやかに流れています。もし仮にそうだとしても、キャンペーン力で候補入りするというのが大方の意見です。もし『コールド マウンテン』が強かった場合、同じ戦争を背景にした『ラスト サムライ』は日本が舞台ゆえ候補入りが難しいかもしれません。公開済みの作品で最も勢いがあるのは『ミスティック・リバー』でしょう。クリント・イーストウッド監督の最高傑作の呼び声高いスリラー・ドラマです。実力派演技陣たちが多数ノミネートされることも予想され、もしかしたら現時点の本命かもしれません。ただし、内容が暗過ぎてオスカー好みではないという声もよく聞かれます。おそらく候補入りは大丈夫だと思われるのは『ロード・オブ・ザ・リング 王の帰還』です。前２作は堂々作品賞にノミネートされていますが、最終章の本作だけが無視されるとは考え難いからです。『王の帰還』の強みは、３作を通して評価される可能性が非常に高いということです。オスカーを「指輪」ムード一色に染め上げる可能性を多分に秘めています。ただし、このシリーズはファンタジー、決してオスカー好みの内容ではないのがマイナス要因です。 ［監督賞］ 作品賞と同じく、大本命がいない部門です。そんな中、『ロスト・イン・トランスレーション』のソフィア・コッポラが注目されています。あのフランシス・フォード・コッポラの愛娘が、監督２作目にして傑作を発表したと話題なのです。候補入りすればいちばん注目を集めることは間違いないでしょう。個人的にはオスカー・ヴァージンのティム・バートン（『ビッグ・フィッシュ』）に大いに期待しているのですが…。 ［主演男優賞］ 昨年に引き続き、強豪がひしめいています。既に公開された作品の中からは、ショーン・ペンとビル・マーレイが大絶賛されています。が、どちらも当確とは言い難いのです。ペンは『ミスティック・リバー』『21グラム』がどちらも有力視されるゆえ、票割れを起こすことが確実なのです。数年前『バーバー』と『チョコレート』で票割れ落選したビリー・ボブ・ソーントンの悲劇が繰り返されるかもしれません。マーレイは会員好みの役者でないことが明らかです。そもそもオスカーはコメディアンに冷たく、マーレイはこれまでにも『天才マックスの世界』等で候補確実と言われながら涙を呑んできました。今回はどうでしょうか。前評判では『砂と霧の家』のベン・キングスレーが凄まじいという声が聞かれます。イラン人という役柄は会員好みで、会員受けが容易に想像できます。現時点ではこの３人がトップランナー。果たしてこの３人を超える勢いを持った主演男優が出てくるでしょうか。 ［主演女優賞］ 昨年のビッグ６のような誰も落とせないという状況ではありません。有力視される女優たちはそれぞれ評価はされていますが、これぞオスカーという演技ではないようです。そんな中、あえてトップランナーを挙げるなら、『21グラム』のナオミ・ワッツをハズすことはできません。元ドラッグ中毒の母親というオスカー好みの役柄で批評家に絶賛されているのです。ただし、作品規模が小さ過ぎるとの声もあります。それを追いかけるのは『恋愛適齢期』のダイアン・キートンでしょうか。ロマンティック・コメディというジャンルながら、公開時期の良さも手伝い、コメディ枠は押さえたという見方が支配的です。公開が近づき、俄かに注目を浴び出したのは『モンスター』のシャーリズ・セロンです。パーフェクトな美貌を崩し、レズビアンの連続殺人鬼という凄まじい役柄を演じているのです。一部では数年前のヒラリー・スワンク的強さを見せるのではないかと言われています。現時点の本命と言っても良いかもしれません。 ［助演男優賞］ 『21グラム』のベニチオ・デル・トロ、『ビッグ・フィッシュ』のアルバート・フィニー、『ミスティック・リバー』のティム・ロビンスが楽々当確と思われていた中、突如水飛沫を上げた俳優がいます。日本の名優、渡辺謙がその人です。『ラスト サムライ』で主演男優のトム・クルーズ以上の存在感を見せ、評論家はもちろん、観客の視線をも独占しているのです。この部門は有力者が少ないウィーク部門。久しぶりの日本人俳優の候補入りが見られるかもしれません。渡辺のブレイクにより、先に挙げた３人も安全圏ではなくなったと言って良いでしょう。 ［助演女優賞］ 『ミスティック・リバー』のマルシア・ゲイ・ハーデンが当確ラインに王手をかけています。彼女は『ポロック ふたりだけのアトリエ』で受賞して以来、会員のお気に入りで毎年のように式に顔を見せています。対象作品も話題作ゆえ、ノミネートは大丈夫でしょう。実はこの部門も助演男優と同じく、ウィーク部門と言われています。抜きん出た存在がいないと言われているのです。誰が来るか読みにくいところですが、『21グラム』のメリッサ・レオ、『砂と霧の家』のショーレ・アグダシュルーのBUZZが徐々に大きくなっていっているように見えます。そうそう、３年連続候補を狙うレニー・ゼルウィガーもこの部門です。対象作『コールド マウンテン』のハイライトは彼女の演技だというインサイダー情報が流れています。候補入りは十分可能でしょう。もしかしたら受賞も今度こそ…？ |
Past Report -76th Annual Academy Awards-