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ベンジャミン・バトン数奇な人生

スラムドッグ＄ミリオネア

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作品賞

受賞予想（2/18）

Final Predictions

ベンジャミン・バトン
数奇な人生

フロスト×ニクソン

ミルク

愛を読むひと

スラムドッグ＄
ミリオネア

○

△

◎

OSCAR PLANET Prediction		スラムドッグ＄ミリオネア
General Prediction		スラムドッグ＄ミリオネア
My Hope		ミルク

　このところ賞レースの本命と目されていた作品が次々と苦戦を強いられている部門。今年は『レボリューショナリー・ロード燃え尽きるまで』がノミネートの段階で早々と脱落。本命の呼び声は『ベンジャミン・バトン数奇な人生』（デヴィッド・フィンチャー監督）に移っていった。

　しかし、『ベンジャミン・バトン』もまた苦戦を強いられている。最多となる13部門で候補に挙がっていて、一見ダントツの勢いを感じさせるのだが、前哨戦は大半がノミネート止まりで終わっていて、受賞に漕ぎ着けたのは地方の批評家賞のみなのである。老いて生まれ徐々に若返っていく男を主人公に、20世紀のアメリカを大スケールで描いた内容はもろオスカー好みであり、保守派が票を投じる可能性も決して低くないのだが、BUZZの盛り上がりをほとんど感じさせないのが気がかりだ。技術部門を受賞して終わり…ということも大いに考えられるだろう。

　では、最も勢いがある作品は何か。もちろん『スラムドッグ＄ミリオネア』（ダニー・ボイル監督）である。半年前には全く話題になっていなかったこの作品が突如脚光を浴びたのは、トロント国際映画祭でのことだった。上映が終わるやいなや、瞬く間にその面白さが世界中に伝わっていき、映画祭では最高賞となる観客賞を受賞した。このパターンは前年の「JUNO ジュノ」と全く同じである（「JUNO」は観客賞次点）。尤も、その勢いは「JUNO」とは比べ物にならならないほどに凄まじく、前哨戦は本作の圧勝だった。普通前哨戦前半で強過ぎると後半に息切れしてしまうものなのだが、本作はその兆候すら見られない。組合賞で軒並み候補に挙がっているのはもちろんのこと、ブロードキャスト映画批評家協会賞、ゴールデン・グローブ賞、アメリカ製作者組合賞、アメリカ映画俳優組合賞（キャスト賞）、アメリカ監督組合賞、アメリカ脚本家組合賞という重要映画賞を完全制覇。もはや死角なし。ノンストップミリオネア状態なのである。インドのスラム街で育った少年がクイズ番組で不正を疑われる話は、舞台がアメリカではないのが多少引っ掛かるものの、希望が溢れるその内容は、100年に一度と言われる大不況の真っ只中で生きる人々の心をガッチリ掴むだろう。ハリウッドだって不況の波は確実に押し寄せている。もはや英国主導の映画だから云々と言っている場合ではないのだ。

　ちなみに『スラムドッグ＄ミリオネア』は、作品賞を受賞するには絶対に候補に挙がっておかなければならない編集賞でもキッチリノミネートされている。編集は映画の出来映えを大きく左右する極めて重要なパートなのである。よってその編集賞で候補落ちした『愛を読むひと』（スティーヴン・ダルドリー監督）は受賞の可能性は低いと見るべきである。そもそも本作は候補に挙がるべきではなかったのかもしれない。ケイト・ウィンスレットの演技は極めて高い評価を受けたが、作品そのものには批判が大変多く、前哨戦で惨敗したのはもちろんのこと、メディアの有力候補リストにも入っていないほどだった。それが突然の浮上。これはもう配給元であるワインスタイン・カンパニーの猛烈なキャンペーンの結果と見るべきであり（プロデューサーであるシドニー・ポラック、アンソニー・ミンゲラの追悼票が入ったとの見方もある）、案の定ノミネーション発表直後から批判が噴出している。本当に『ダークナイト』や『WALL・E／ウォーリー』を差し置いてノミネートに挙がるべきだったのか。ハーヴェイ・ワインスタインは既に受賞にも自信満々だと言う。ワインスタインがゴリ押ししても、さすがにオスカー像には届かないと思われるが、果たして…。

　『ミルク』（ガス・ヴァン・サント監督）と『フロスト×ニクソン』（ロン・ハワード監督）は重要賞に次々ノミネートされ、オスカーの編集賞候補にも挙がっていて、受賞の資格は十分あると言って良いが、如何せん話題性不足は否めない。ゲイの政治家ハーヴェイ・ミルクを主人公にした『ミルク』は保守派の票が望めないし、『フロスト×ニクソン』はトニー賞受賞舞台の映画化である点に足を引っ張られるだろう。それに『スラムドッグ＄ミリオネア』へ投票したくない会員の票は『ベンジャミン・バトン』の方に流れる可能性が高い。

　映画そのものの評価を考えても、前哨戦の結果を考えても、BUZZの盛り上がりを考えても、『スラムドッグ＄ミリオネア』が断然優勢。他作品の逆転の目はないと見た。

**Prediction Chart**
		％	Final	2/16	2/11	2/6	2/1	1/26
1	スラムドッグ＄ミリオネア	50	1	1	1	1	1	2	本命
2	愛を読むひと	15	2	2	3	3	5	5	大穴
3	ベンジャミン・バトン数奇な人生	15	3	3	2	2	2	1	対抗
4	ミルク	15	4	4	4	5	4	3	逆転
5	フロスト×ニクソン	5	5	5	5	4	3	4	逆転

**List of Marks**
ベンジャミン・バトン数奇な人生	最多13部門ノミネート（＋＋）	4.0
	圧倒的なスケール感。製作費も１億5,000万ドルかけられている（＋＋）
	老人として生まれ若返っていく男が主人公。独創的！（＋）
	でもこの奇抜さは老会員には受け入れ難いかもしれない（＊）
	前哨戦では地方の批評家賞を受賞しただけに終わる（－）
	そもそも批評筋からは否定派も多数出ている（－）
	このところ超大作は作品賞受賞から遠ざかっている。そろそろ…（＋＊）
フロスト×ニクソン	５部門ノミネート（＊）	2.0
	オスカー会員は政治的要素の入った作品がお好き（＋＋）
	トニー賞受賞舞台劇の映画版。中身は当然濃い（＋）
	この映画に投票したら頭が良いと思われそう（＊）
	前哨戦ではラスヴェガス映画批評家賞を受賞したのみ（－）
	元々舞台用の題材。そしてフィクション部分も多数？（＊）
	"2008年の「フィクサー」"。…ということは…（＊）
ミルク	８部門ノミネート（＊）	2.5
	ニューヨーク映画批評家協会賞を受賞（＋）
	政治家ハーヴェイ・ミルクが主人公。オスカーは実話物好き（＋＋）
	今年実話物は本作のみ。ここに投票すれば間違いない（＋）
	でもミルクはゲイ。「ブロークバック・マウンテン」を思い出そう（－）
	ショーン・ペンの主演男優賞に票が集中するのでは？（＊）
	ゴールデン・グローブ賞では候補落ちしているしね（＊）
愛を読むひと	５部門大逆転ノミネート（＋）	1.5
	ワインスタイン・カンパニーは受賞に向けてますます大金を投じる！（＋）
	でも金にモノを言わせた候補に批判も噴出（－）
	そもそも本作を叩いた批評家はかなりの数に上っている（－－）
	票を投じるならケイト・ウィンスレットに…でしょう？（＊）
	アンソニー・ミンゲラ、シドニー・ポラック追悼票（＋＋）
	オスカーはナチスが絡んだ映画にとことん弱い傾向（＋）
スラムドッグ＄ミリオネア	９部門10ノミネート（＋）	5.0
	アメリカ製作者組合賞、ゴールデン・グローブ賞受賞（＋＋）
	批評家協会賞受賞も続々制覇。ノンストップ！（＋＋）
	映像と音楽の見事な融合。今の時代に必要な話（＋）
	興行的にも大健闘。１億ドル突破も夢じゃないぞ！（＋）
	インドのスラム出身の少年が主人公。おーい、アメリカの賞ですよ（－）
	フロントランナーゆえにバッシング多数。当日まで耐えられるか（－）

The Five Nominees　ノミネート作品　［I guessed 4/5］
ベンジャミン・バトン数奇な人生　The Curious Case of Benjamin Button
	配給：パラマウント　　監督：デヴィッド・フィンチャー
	Nominees 作品、監督、主演男優、助演女優、脚色、撮影、編集、美術、衣装デザイン他（最多13部門）
	Precursors SLFCA、HFCS
	３時間近い上映時間を一気に見せるファンタジー・ドラマ。圧倒的スケール感と第一級の映画技術は、候補作の中で最も作品賞に相応しいとの声が出ている。21世紀版「フォレスト・ガンプ一期一会」？
フロスト×ニクソン　Frost/Nixon
	配給：ユニヴァーサル　　監督：ロン・ハワード
	Nominees 作品、監督、主演男優、脚色、編集（５部門）
	Precursors LVFCS
	トニー賞受賞舞台劇を主演のキャストそのままに映画化。プレミア上映されたロンドン映画祭では評価が伸びなかったが、アメリカでは好意的見解が圧倒的優勢。“2008年の「フィクサー」”的ポジション。
ミルク　Milk
	配給：フォーカス・フィーチャーズ　　監督：ガス・ヴァン・サント
	Nominees 作品、監督、主演男優、助演男優、脚本、編集、衣装デザイン、作曲（８部門）
	Precursors NYFCC、SFFCC、SFCA、VFCC
	ゲイを公言しながら当選を果たした初めての政治家ハーヴェイ・ミルクの伝記映画。ガス・ヴァン・サントがいつもとはガラリと調子を変えて演出、批評家から絶賛された。保守派の票をどう取り込むか。
愛を読むひと　The Reader
	配給：ワインスタイン・カンパニー　　監督：スティーヴン・ダルドリー
	Nominees 作品、監督、主演女優、脚色、撮影（５部門）
	Precursors None
	ベルンハルト・シュリンクの世界的ベストセラー「朗読者」の映画化。否定派が相当数に上る中で主要部門で大旋風を巻き起こす。配給元の猛プッシュのおかげと冷ややかな視線が…。受賞はないはず。
スラムドッグ＄ミリオネア　Slumdog Millionaire
	配給：フォックス・サーチライト　　監督：ダニー・ボイル
	Nominees 作品、監督、脚色、撮影、編集、録音、音響効果、作曲、主題歌（×２）（９部門10ノミネート）
	Precursors PGA、BAFTA、GGA、GSA、NBR、BFCA、BSFC、WFCA、SDFCS、PFCS、DFFCA、FFCC...
	ダニー・ボイルがボリウッド要素も取り入れた作品で、世界的に大絶賛を集めて完全復活。映像と音楽、そして物語の見事なコンビネーションに誰もが魅了されずにはいられないとの声。前哨戦圧勝。

ranking

製作費			前哨戦ポイント　-2/22-
1	ベンジャミン・バトン数奇な人生	$150m	1	スラムドッグ＄ミリオネア	258.5 p
2	愛を読むひと	$32m	2	ベンジャミン・バトン数奇な人生	149.5 p
3	フロスト×ニクソン	$25m	3	ミルク	142.0 p
4	ミルク	$20m	4	フロスト×ニクソン	111.5 p
5	スラムドッグ＄ミリオネア	$15m	5	愛を読むひと	73.5 p

評価 rating			興行収入　-2/16-
1	スラムドッグ＄ミリオネア	89.7 p	1	ベンジャミン・バトン数奇な人生	$122m
2	ミルク	87.9 p	2	スラムドッグ＄ミリオネア	$88m
3	フロスト×ニクソン	84.0 p	3	ミルク	$26m
4	ベンジャミン・バトン数奇な人生	74.0 p	4	愛を読むひと	$19m
5	愛を読むひと	59.7 p	5	フロスト×ニクソン	$16m

ノミネート予想（1/18）

Final Prediction

　2008年は不作である。好レビューを獲得した映画はたくさんあったが、手放しの絶賛作は少ない。多くが「a good movie, but not great」（良い映画だが、素晴らしい映画ではない）と形容されていて、賞レースに絡んでいる作品にもそう言われているものがある。だから作品賞候補を狙う作品がたったの６本に絞られても、何の不思議もないのである。

　ノミネートがまず間違いないのは復活ダニー・ボイルによる『スラムドッグ＄ミリオネア』だろう。ムンバイのスラム街で育った少年がクイズ番組で不正を疑われる話で、トロント映画祭で観客賞を受賞してからBUZZが沸騰。その勢いのまま全米の評論家から絶賛を獲得し、ナショナル・ボード・オブ・レヴュー賞を始め前哨戦も圧倒的な強さを発揮、ブロードキャスト映画批評家協会賞、ゴールデン・グローブ賞も獲得した。アメリカ映画協会など、アメリカ映画ではないと理由でトップ10から外しておきながら、わざわざ別枠での表彰を発表したくらいだ。今年、他に英国映画の有力作が見当たらないのも心強い要素である。

　『ベンジャミン・バトン数奇な人生』もノミネートまでは堅いだろう。老人として生まれ段々若返っていく男の話という風変わりなファンタジー・ドラマで、一見賞受けしなさそうなのだが、圧倒的なスケール感と第一級の映画技術によって演出された何十年にも渡る物語は、そのままアメリカの歴史とも読めるとのことで、新たなる「フォレスト・ガンプ一期一会」（94年）とも呼ばれている。案外否定派も多いのだが、最多ノミネートも確実との声も大きく、突然失速するとも思えない。

　ニューヨーク映画批評家協会を獲得した『ミルク』も勢いのある作品の一本だ。ゲイを公言しながら当選を果たした初めての政治家になったハーヴェイ・ミルクの伝記映画で、評判がすこぶる高い。主演のショーン・ペンには二度目のオスカー受賞も囁かれていて、勢いも加速している。ゴールデン・グローブ賞で無視されたことなど、気にする必要はない。

　以上の３本は安全圏に入っていると言って良いが（『ミルク』はまだ若干の不安があるが…）、残りの２席は熾烈な争いになるだろう。『ダークナイト』『フロスト×ニクソン』『WALL・E／ウォーリー』の３作品がチャンスを窺っている。

　予想がちょっと難しいのは『ダークナイト』と『WALL・E／ウォーリー』が３作品に入っているからで、なぜなら前者はコミック映画、後者はアニメーション映画なのである。本来このジャンルの映画が作品賞で注目されることはない。ないのだがしかし、2008年最も賛辞を集めたのは間違いなくこの２本で、評論家が選ぶ年間ベストにも次々に選ばれている他、批評家賞の作品賞を受賞する快挙も成し遂げている。特に『WALL・E／ウォーリー』はロサンゼルス、ボストン、シカゴという重要批評家賞を征しているのだから恐れ入る。

　ただ、この２本ならば『ダークナイト』のノミネートチャンスの方が断然大きいだろう。『WALL・E／ウォーリー』はアニメーション映画賞の受賞が確実で、そちらで候補に挙がるのでそれで良しとするような空気が漂っているからだ。『ダークナイト』はコミック映画と言っても心理ドラマに重点を置いた重厚な作りであり、いつもより会員がこのジャンルに票を投じるのに躊躇いを感じないはずだ。興行収入が５億ドルを超えるミラクルな結果を弾き出しているのも、間違いなくプラスになるだろう。一発逆転で受賞の可能性すら秘めていると思う。

　『フロスト×ニクソン』は政治要素の絡んだドラマというオスカーが好みとするジャンルであり、昨年の「フィクサー」的なポジションを獲得しそうな気配が濃厚。どの部門も受賞するようなパワーは感じられないが、ノミネートまでは何とか勝ち取りそうに見える。

　『ダウトあるカトリック学校で』はアメリカ映画俳優組合賞で最多ノミネートを獲得し、俳優人気が高いことを証明したが、実は作品評価自体はさほど高くない。いかにもオスカーを狙った家族ドラマ『レボリューショナリー・ロード燃え尽きるまで』は賞レース前までは作品賞の本命とも考えられていたが、やはり作品評価が期待ほど伸びず、急激に勢いを失っている。保守派が逃げとして票を投じそうな気配もあるが、ファイナル５に滑り込むのは難しいと思われる。『愛を読むひと』は賞レース終盤になって追い上げが激しい。ワインスタイン・カンパニーによる猛プッシュが功を奏しているとの見方が強く、もし候補入りしたらかえって批判を浴びそうな気配がある。さすがにあのレヴェルの評価でノミネートはないと思うのだが…。

　残り２枠のバトル。『WALL・E／ウォーリー』を一押しにしたいが、結局『ダークナイト』と『フロスト×ニクソン』が来る、そんな気がする。

OSCAR PLANET Prediction
ベンジャミン・バトン数奇な人生（デヴィッド・フィンチャー監督）	Lock
ダークナイト（クリストファー・ノーラン監督）	Shaky
フロスト×ニクソン（ロン・ハワード監督）	Shaky
ミルク（ガス・ヴァン・サント監督）	Likely
スラムドッグ＄ミリオネア（ダニー・ボイル監督）	Lock
The Runner-up
WALL・E／ウォーリー（アンドリュー・スタントン監督）	Shaky

The Five Frontrunners　フロントランナー（５作品）　（1/18）
Lock
ベンジャミン・バトン数奇な人生 The Curious Case of Benjamin Button （パラマウント） Win: SLFCA、HFCS	Ｆ・スコット・フィッツジェラルドの原作を基に、老人として生まれ、段々若返って生涯を終える男を描く。オスカーにピッタリの芸術映画との声。 ~~Weak Point~~ デヴィッド・フィンチャーとブラッド・ピットのコンビ作品が作品賞候補に挙がったことはないが、時代の流れを感じさせるスケールの大きな作りは「本命」と呼ぶに相応しい。最多ノミネート濃厚。
スラムドッグ＄ミリオネア Slumdog Millionaire （フォックス・サーチライト） Win: PGA、BAFTA、GGA、GSA、NBR、BFCA、BSFC、WFCA、SDFCS、PFCS、DFFCA、FFCC、DFCS、OFCC、KCFCC、IFCA、NTFCA、NYFCO	トロント映画祭で観客賞を受賞してBUZZが90度に近い角度で上昇している小品。ダニー・ボイルの最高傑作との声。批評家賞総ナメ？ ~~Weak Point~~ 賞金番組で不正を疑われてしまう少年を描く小品。“2008年の「JUNO ジュノ」”との声が多数挙がっているが、まさしくその通り。英国映画枠もキッチリ確保。候補落ちはあり得ない勢い。
Likely
ミルク Milk （フォーカス・フィーチャーズ） Win: NYFCC、SFFCC、SFCA、VFCC	70年代、ゲイの政治家ハーヴェイ・ミルクを描く伝記ドラマ。珍しいことにこのジャンルをガス・ヴァン・サントが手掛けている。会員は実話ものがお好き。 Weak Point ショーン・ペンが主演だが、彼の大芝居を前面に出して失敗した「オール・ザ・キングスメン」のようになりませんように。ゲイ要素が保守的な会員の投票を躊躇わせる可能性がある。GG賞落選。
Shaky
ダークナイト The Dark Knight （ワーナー・ブラザース） Win: AFCA、UFCS、AAFCA、HFF	今年最高の評価を叩き出し、興行的にも記録的大ヒット。「スター・ウォーズ」「E.T.」だってこの部門で候補入り。逆転受賞の可能性も？ Weak Point そうは言っても、時代が違う。技術部門止まりなのではないの？ヒース・レジャーの助演男優賞に票が集中してしまう危険もある。コミック原作映画を候補に挙げるのか、会員の度量が試される。
フロスト×ニクソン Frost/Nixon （ユニヴァーサル） Win: LVFCS	ウォーターゲート事件後、英トークショウのホストとリチャード・ニクソンの対決を描く実話ドラマ。いかにもオスカーが好きそうな題材。 Weak Point ベースは高評価を受けた舞台。つまり非常に演劇向けの題材でもある。アメリカでは好評だが、ロンドン映画祭では評価が伸びなかった。“2008年の「フィクサー」”枠をなんとか確保したい。

ノミネーション予想これまでの流れ 2008　（Changes in Red）
Final
ミルク	ベンジャミン・バトン	フロスト×ニクソン	ダークナイト	スラムドッグ＄ミリオネア*
The Leader：スラムドッグ＄ミリオネア
1/1
ミルク	ベンジャミン・バトン*	フロスト×ニクソン	WALL・E／ウォーリー	スラムドッグ＄ミリオネア
12/1
ミルク	ベンジャミン・バトン	レイチェルの結婚	ダークナイト	スラムドッグ＄ミリオネア*
11/1
ミルク	フロスト×ニクソン	レイチェルの結婚	ダークナイト*	ダウトあるカトリック学校で
10/1
ミルク	フロスト×ニクソン	チェンジリング*	ダークナイト	ダウトあるカトリック学校で
9/1
ミルク	バーン・アフター・リーディング	チェンジリング*	ダークナイト	ダウトあるカトリック学校で
8/1
ミルク	バーン・アフター・リーディング	チェンジリング*	レボリューショナリー・ロード	ダウトあるカトリック学校で
7/1
オーストラリア	バーン・アフター・リーディング	チェンジリング*	レボリューショナリー・ロード	ダウトあるカトリック学校で
6/1
オーストラリア	バーン・アフター・リーディング	チェンジリング	レボリューショナリー・ロード*	ブラインドネス
5/1
オーストラリア	バーン・アフター・リーディング	インディ・ジョーンズ	レボリューショナリー・ロード*	ブラインドネス
4/1
オーストラリア	バーン・アフター・リーディング	インディ・ジョーンズ	レボリューショナリー・ロード*	ワルキューレ

The Other Contenders　その他の有力候補　（1/18）
Very Possible
WALL・E／ウォーリー Wall-E （ディズニー）	アニメーション映画賞の常連、ピクサー最新作。ゴミ拾ロボットに全世界熱狂！2008年最も愛された映画。作品賞候補に挙がって、夢を見させて！Win: LAFCA、BSFC、CFCA、COFCA、OFCS
Possible
ダウトあるカトリック学校で Doubt （ミラマックス）	人気舞台劇を実力派キャストを集めて映画化。ピュリッツァー賞、トニー賞をする等内容の濃さは保証済み。舞台の名作が映画の名作になるとは限らない。舞台の映画化なら『フロスト×ニクソン』も…。
グラン・トリノ Gran Torino （ワーナー・ブラザース）	クリント・イーストウッドが「ミリオンダラー・ベビー」以来、４年ぶりに俳優業に復帰。「ダーティハリー６」との噂もあったが、心温まる感動ドラマに仕上がった。役者イーストウッドのラストムービー？
ハッピー・ゴー・ラッキー Happy-Go-Lucky （ミラマックス）	ベルリン国際映画祭でサリー・ホーキンスが銀熊賞（女優賞）を獲得したマイク・リー監督作品。ロンドンを舞台に女性教師を主人公にしたコメディ。演技賞、脚本賞中心のレースか。Win: GSA、ICS
愛を読むひと The Reader （ワインスタイン・カンパニー）	ベルンハルト・シュリンクの「朗読者」を実力派映画人が結集して映画化。母親ほど歳の離れた女性と関係を持った15歳の少年が直面する真実とは…。意外や、評論家筋は否定派多数。
レイチェルの結婚 Rachel Getting Married （ソニー・ピクチャーズ・クラシックス）	ヴェネチアに続き、アメリカを熱狂させて、ジョナサン・デミが華麗に復活。リハビリ施設の入退院を繰り返している若い女が主人公。女性を中心にした映画は受けにくい傾向がある。
レボリューショナリー・ロード燃え尽きるまで Revolutionary Road （パラマウント・ヴァンテイジ）	50年代、郊外に住む若夫婦の話。お年を召した方が多いアカデミー会員の琴線には触れなかったりして…。今年最もオスカー臭のする作品だが、このところ本命視されていた作品は次々撃沈。
それでも恋するバルセロナ Vicky Cristina Barcelona （ワインスタイン・カンパニー）	監督のウッディ・アレンが「バルセロナへのラヴレター」と紹介するロマンティック・コメディ。ベタ惚れ状態のスカーレット・ヨハンソンをまたもや起用。カンヌでペネロペ・クルスの演技が話題に。Win: GGA
扉をたたく人 The Visitor （オーヴァーチュア・フィルムズ）	講演のために出かけたニューヨークのアパートの隣に住む異人種カップルと親交を深める教授を描く。リチャード・ジェンキンスの演技を中心に高評価獲得。４月公開で、かつとても小さな作品。
ウェンディ＆ルーシー Wendy and Lucy （オシロスコープ）	愛犬とアラスカに向かう孤独な女性を描くインディーズ作品。犬好きには堪らない作品？結末には涙が出るとの噂が…。ミシェル・ウィリアムスの主演女優賞、脚本賞が有力か。Win: TFCA
レスラー The Wrestler （フォックス・サーチライト）	心臓発作を患った老いたレスラーがもう一度リングに上がる様を描く実話物。監督はダーレン・アロノフスキーという珍しい人選。ミッキー・ロークが絶賛され、ヴェネチア制覇。Win: VIFF、ISA、LFCC
Longshot
アパルーサの決闘 Appaloosa （ニューライン）	ロバート・Ｂ・パーカーの原作を基にした西部劇。手掛けるのはこれが監督第二作となるエド・ハリス。正統派の作りだが、今作られたことに疑問の声も…。技術賞を狙いましょう。
バーン・アフター・リーディング Burn After Reading （フォーカス・フィーチャーズ）	ディスクを紛失して窮地に陥る元CIAエージェントを描くコメディ。コーエン兄弟作品ゆえオフビートな仕上がり。…ということは賞好みの題材ではない。脚本賞がより有力。評価は期待ほど伸びず。
チェンジリング Changeling （ユニヴァーサル）	誘拐された息子が戻ってくるが、母親は本当に息子か疑い出して…という実話ミステリー。カンヌを大熱狂に包み込む。…が、米国では評価伸びず。クリント・イーストウッドマジック不発？Win: WFCC
チェ／28歳の革命 Che Part 1: The Argentine （IFCフィルムズ）	スティーヴン・ソダーバーグによる「チェ・ゲバラ」二部作の一本。1956年、若き日のチェ・ゲバラとキューバ人バンドが描かれる。『チェ／39歳別れの手紙』と票割れすることは確実。カンヌで不発。
チェ／39歳別れの手紙 Che Part 2: Guerrilla （IFCフィルムズ）	スティーヴン・ソダーバーグによる「チェ・ゲバラ」二部作の一本。国連で演説するためニューヨークに向かうチェ・ゲバラが描かれる。『チェ／28歳の革命』とどちらが出来が良いのか。カンヌで苦戦。
ある公爵夫人の生涯 The Duchess （パラマウント・ヴァンテイジ）	18世紀、マリー・アントワネットの友人であり、故ダイアナ元妃の祖先にあたる公爵夫人ジョージアナを描くコスチューム劇。演技や衣装、美術が高い評価を得るも、作品そのものは今一歩。
エレジー Elegy （サミュエル・ゴールドウィン・フィルムズ）	著名な文化評論家がある女学生と出会い、自分の中に眠っていたセクシャルな部分を刺激されてしまう話。女性監督らしい細やかな演出が評価されるも、絶賛一色とはならず。
フローズン・リバー Frozen River （ソニー・ピクチャーズ・クラシックス）	アメリカへの不法入国を試みるふたりの女を描いたドラマ。サンダンス映画祭でグランプリを獲得してBUZZが上昇。インディペンデント・スピリット賞を狙いましょう。メリッサ・レオに賛辞集中。Win: WFCC
HUNGER ハンガー Hunger （IFCフィルムズ）	IRAの活動家ボビー・サンズの６週間にも及ぶハンガーストライキを描く問題作。カンヌ映画祭では「テロリスト賞賛」との批判も出たが、その力強い展開は大きな注目を集める。アメリカでも賛否両論か？
ヒットマンズ・レクイエム In Bruges （フォーカス・フィーチャーズ）	難しい仕事をこなしたふたりの殺し屋がベルギーで死生観を変えていく様を描く喜劇。スマートな演出もさることながら、コリン・ファレルとブレンダン・グリーソンの演技が話題。英国資本中心。
インディ・ジョーンズクリスタル・スカルの王国 Indiana Jones and the Kingdom of the... （パラマウント）	「もういいっちゅうねん」という叫びを無視した「インディ・ジョーンズ」シリーズ第４弾。皆忘れているが、一作目は作品賞にノミネートされていたりする。興行的に成功＆まずまずの評価。これで十分でしょう？
アイアンマン Iron Man （パラマウント）	人気マーヴェルコミックの映画化がサマーシーズンの先陣を切り、評論家大絶賛＆映画ファン大熱狂の社会現象を巻き起こす。決してオスカー受けしない娯楽作だが、もし候補に挙がったら…。
新しい人生のはじめかた Last Chance Harvey （オーヴァーチュア・フィルムズ）	娘の結婚式のために訪れたロンドンで、恋に落ちる初老の男を描くロマンティック・ドラマ。ダスティン・ホフマンが軽妙な演技で久々に注目されているが、そちらに票が集まる可能性大。
ザ・クリミナル合衆国の陰謀 Nothing But the Truth （ヤーリ・フィルム・グループ）	情報源の開示を拒否したことにより刑務所に入れられるジャーナリストを描くドラマ。ヴァレリー・プレイム事件を連想させる内容だが、こちらはフィクション。この部門で戦うには小粒。
ワルキューレ Valkyrie （ユナイテッド・アーティスツ）	アドルフ・ヒトラーの暗殺を計画する男を主人公にした社会派スリラー。主演のトム・クルーズのイメージのせいで、イロモノ的な期待感があったが、蓋を開けてみれば、まずまずの評価を獲得。
クロッシング・デイ What Doesn't Kill You （ヤーリ・フィルム・グループ）	サウスボストンのストリートで育った幼馴染ふたりを描くクライムドラマ。マーク・ラファロとイーサン・ホークの一騎打ちが話題。トロント映画祭で高評価を獲得。配給会社のパワーが弱い。

No Chance　チャンスなし　（1/18）
囚われのサーカス Adam Resurrected （ブレイバーグ・エンターテイメント）	アメリカン・クライム An American Crime （ファースト・ルック）
オーストラリア Australia （20世紀フォックス）	ブラインドネス Blindness （ミラマックス）
ワールド・オブ・ライズ Body of Lies （ワーナー・ブラザース）	情愛と友情 Brideshead Revisited （ミラマックス）
ディファイアンス Defiance （パラマウント・ヴァンテイジ）	幸せのきずな Flash of Genius （ユニヴァーサル）
ファニーゲーム U.S.A. Funny Games （ワーナー・インディペンデント）	Good （シンク・フィルム）
ロック・ミー・ハムレット！ Hamlet 2 （フォーカス・フィーチャーズ）	ハイスクール・ミュージカルザ・ムービー High School Musical 3: Senior Year （ディズニー）
Home for Christmas （ライオンズゲイト）	かけひきは、恋のはじまり Leatherheads （ユニヴァーサル）
ダイアナの選択 The Life Before Her Eyes （マグノリア）	マンマ・ミーア！ Mamma Mia! （ユニヴァーサル）
Miss Pettigrew Lives for a Day （フォーカス・フィーチャーズ）	セントアンナの奇跡 Miracle at St. Anna （タッチストーン）
最後の初恋 Nights in Rodanthe （ワーナー・ブラザース）	７つの贈り物 Seven Pounds （コロンビア）
セックス・アンド・ザ・シティ Sex and the City （ニューライン）	ストップ・ロス戦火の逃亡者 Stop-Loss （パラマウント）
フェイクシティ／ある男のルール Street Kings （フォックス・サーチライト）	チョイス！ Swing Vote （タッチストーン）
脳内ニューヨーク Synecdoche, New York （ソニー・ピクチャーズ・クラシックス）	ブッシュ W. （ライオンズゲイト）
明日の私に着がえたら The Women （ピクチャーハウス）

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