Column コラム
| アカデミー賞に関する管理人の雑文です。 |
| last update: January 19, 2010 |
| ■カテゴリー・コンフュージョンとは…？ （2010.01.19） |
| 賞レースシーズンになると、各配給会社が業界紙やウェブサイトを中心にFYC（For Your Consideratin）の広告を打ちます。賞の投票に考慮して欲しい作品を宣伝するのです。作品の中から印象的な場面写真をピックアップ、そこに受賞歴や絶賛評を載せ、投票者に投票を呼びかけるというのが一般的なFYC広告で、この広告の量を見れば各配給会社がどの作品に力を入れているか、一目瞭然。やり過ぎは禁物ですが、外野から眺めている分にはなかなか面白いものです。 FYC広告は有力候補者たちにとって有難いもののはずですが、しかし、稀にFYC広告によりノミネートチャンスを低くしてしまう俳優が出てきます。所謂カテゴリー・コンフュージョンの犠牲になるのです。俳優をプッシュするFYC広告には、その俳優をどのカテゴリーで投票して欲しいかも掲載されます。会員たちはそれを参考に票を投じますが、ここで重要なのは票を入れる部門を最終的に判断するのは会員自身だということです。主演プッシュされていてもその会員自身が助演だと判断すれば助演部門に票を入れることができますし、その逆のパターンもあるのです。つまり明らかに間違った部門でプッシュされると、それに従った会員と自分の判断で別部門だと決めた会員が出てきてしまい、票が主演と助演ではっきりと分散してしまいます（もちろん元々主演助演の区別が曖昧な役柄であることにより票が割れる場合もあります）。これがカテゴリー・コンフュージョンです。どちらか一方でノミネートされれば問題はありませんが、結局どちらの部門でもノミネートされないという最悪の事態も起こり得るのです。 配給会社は賞レース戦略のエキスパートを雇って慎重に宣伝を展開しますが、それでも毎年のように苦しいカテゴリー分けが見られます。今年で言うなら、『ブラザーズ』のトビー・マグワイア、『イングロリアス・バスターズ』のブラッド・ピットとメラニー・ロラン、『NINE』のマリオン・コティヤール、『クレイジー・ハート』のマギー・ギレンホールらは主演部門でプッシュされていますが、誰の目から見ても助演部門でプッシュした方がノミネートされるチャンスが高いと言われています。 どうしてこのようなことになってしまうのでしょうか。一つは混戦部門を避けたいというのがあります。ギレンホールは競争相手が少ないとして主演でプッシュされることになったと言われています。混戦の助演で戦うより主演で推した方がチャンスが大きいのではないかという読みです。もう一つは共演者との兼ね合いによるもの。一つの作品から何人も同じ部門で候補に挙がるのは稀なため、わざとプッシュ部門を分けるのです。ピットはクリストフ・ヴァルツ、ロランはダイアン・クルーガー、コティヤールはペネロペ・クルスやケイト・ハドソンらとの票割れを避けるために、主演部門で推されることになったのは明白です。彼らはカテゴリー・コンフュージョンの影響をもろに受けることになるでしょう。 もちろん戦略がハマってノミネート勝ち得たケースもあります。「ドリームガールズ」（06年）のジェニファー・ハドソンは明らかに主演ながら助演プッシュで受賞、「ウォーク・ザ・ライン 君につづく道」（05年）のリース・ウィザースプーンは主演と助演で判断が分かれるところを主演プッシュにして見事受賞に漕ぎ着けています。「コラテラル」（04年）で助演賞候補に挙がった主演ロールのジェイミー・フォックスも戦略がハマった一例でしょう。しかし、多くはむしろ曖昧さの犠牲になってしまうのです。 ただし、今年のコンテンダーがカテゴリー・コンフュージョンの犠牲者になったと決めつけてしまうのは早計です。カテゴリー・コンフュージョンを跳ね除けてノミネートを獲得した俳優も決して少なくありません。近年で言えば「愛を読むひと」（08年）のケイト・ウィンスレットや「クジラの島の少女」（03年）のケイシャ・キャッスル＝ヒューズは助演で推されながら、見事主演でノミネートされる快挙を達成しています。宣伝に惑わされることなく、会員が正しい判断を下した例と言われています。 今年カテゴリー・コンフュージョンを覆してノミネートを獲得する俳優は出てくるでしょうか。コティヤールやロランはそうなるパワーを秘めているように見えますが、果たして…。 |
| ■ゴールデン・グローブ賞 ノミネーション予想 （2009.12.13） | |||||||||
| アカデミー賞に次ぐ映画賞と言われているのが、ゴールデン・グローブ賞です。ハリウッド外国記者協会の会員の選出によって選ばれる同賞は、普段からスターに接している記者たちが投票するため、スター俳優が強い傾向にあります。それゆえ式の出席者の顔ぶれはアカデミー賞以上に華やかになることも少なくありません。近年は影響力の低下が囁かれていますが、しかし、それでもなおゴールデン・グローブ賞が前哨戦の中でも重要な賞と言って良いでしょう。さて、今年も全く深く考えず、主要８部門のノミネート予想をしてみました。
繰り返しますが、ゴールデン・グローブ賞は外国映画記者協会のメンバーにより選ばれます。常に大スターを取材し、見慣れている人間が選ぶ賞ということです。つまり彼らはジョージ・クルーニーと顔見知りかもしれないし、サンドラ・ブロックに名前を覚えられているかもしれない。スターの活躍によって彼らは仕事をしているということでもあり、当然無名の役者よりはスターの方が票を集めやすくなります。逆に、小品に出演している役者は不利でしょう。取材規模が小さくなり、記者たちの関心も薄くなりがちだからです。上記の予想はそれを考慮した上でのものになっています。 予想が楽しいのはドラマ部門よりもミュージカル／コメディ部門です。アカデミー賞候補には挙がらないだろうスターがひょっこり顔を出すことが多いからです。去年だとコリン・ファレル、ジェームズ・フランコらがサプライズ・ノミネーションを獲得し、楽しませてくれました（ファレルは受賞も…）。今年で言うと、ジョセフ・ゴードン＝レヴィット、ゾーイ・デシャネル、サンドラ・ブロック、ブラッドリー・クーパーあたりです。それにドラマ部門よりも、むしろこちらの予想が当たったときの方が嬉しいでしょう。 皆さんも気楽に、遊び気分で予想してみてはいかがでしょう？ |
| ■８月までに公開された作品の中でオスカーの可能性があるのは…？ （2009.09.01） | ||||||
| もう９月です。サマーシーズンも終わり、秋が深まっていく時期です。ファミリー層の大量動員を意識した超大作が次々封切られる夏とは異なり、これからは賞レース参戦を目指したドラマティックな作品の公開が増えていきます。沢山の賞が用意されている映画界ですが、各作品が最終的に目指すのは、もちろんアカデミー賞です。 さて、各映画会社が賞に狙いを定めた作品は９月以降に封切られる傾向にあります。作品を鑑賞した記憶が薄れない内に投票してもらった方が、票を集めやすいからです。それでも１月から８月に公開された作品にチャンスがないのかと言うとそうではなく、最近はDVDを使ったキャンペーンで賞レースシーズンに再び注目を集める作品も少なくありません。例えば昨年は、『扉をたたく人』『フローズン・リバー』『トロピック・サンダー 史上最低の作戦』『ダークナイト』『それでも恋するバルセロナ』といった作品が主要部門で候補に挙がりました。例年よりも多めだったと言って良いでしょう。投票関係者も賞シーズンに封切られた作品だけを重要視しているわけではないのです。 では、今年はここまでどんな作品が支持されたのでしょうか。今回は第82回アカデミー賞（主要６部門）が９月上旬に開かれたとしたらどうなるか考えてみました。対象は今年の１月から８月までに公開された作品となります。もちろん違う意見の方も多いでしょうが、それほど大差ないはずです。なお、作品賞は今年から10作品が候補に挙がりますが、時期が短いため５作品に絞ってあります。
作品賞候補は10枠に広がったことより、これまでよりも娯楽大作にもチャンスが大きいはずです。『スター・トレック』や『カールじいさんの空飛ぶ家』は間違いなく今年最高のレヴューを獲得した映画であり、作品賞候補に挙がる資格を十分備えていると言って良いでしょう。昨年は『ダークナイト』が確実との声も挙がりながら結局落選を喫しましたが、それと同じことが起こらないことを祈りたいところです。 さて、この中から誰が勝ち抜けるでしょうか（* はその可能性が低くないコンテンダーです）。 |
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