Predictions -Best Picture-

作品賞

受賞予想（3/2）

Final Predictions
君の名前で 僕を呼んで	ウィンストン・チャーチル ヒトラーから世界を救った男	ダンケルク	ゲット・アウト	レディ・バード
		△	△	△
ファントム・スレッド	ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書	シェイプ・オブ・ ウォーター	スリー・ビルボード
		○	◎
OSCAR PLANET Prediction スリー・ビルボード General Prediction シェイプ・オブ・ウォーター My Hope レディ・バード
少し前までは大抵の場合、最多ノミネート作品が作品賞を受賞すると信じられていた。これは実は理にかなっている。オスカーの各賞ノミネーションはその部門の専門分科会に属する会員が票を投じる。演技賞なら俳優分科会の会員、つまり俳優たちが投票する。作曲賞や主題歌賞なら音楽分科会の会員、すなわち作曲家やミュージシャンが投票する。ということは、各部門で候補に挙がった作品は、その分科会にその作品の支持者が多いのだ。 　しかし、最終投票は所属分科会は関係なく、会員全員が各部門に投票できる。もちろん作品賞も、だ。つまり候補数が多いということは、それだけ多くの分科会から支持を受けられる可能性があるということで、今回で言うなら13部門で候補に挙がった『シェイプ・オブ・ウォーター』は、それだけ多くの分科会に、確実な支持者がいるということだ。録音が優れていても作品賞にはどうかという見方はあるだろうし、衣装が際立っていても作品全体はイマイチと冷静に考える会員ももちろんいるだろう。ただ、自分が専門にしている分野が優れている作品は支持したくなる…という読みは、あながち的外れではないのではないか。 　そんなわけで今年は『シェイプ・オブ・ウォーター』が強いだろう。13部門の内容も優れている。作品賞を受賞する上で絶対に押さえておきたい監督賞、脚本賞、編集賞はしっかり候補入り。演技部門では3人が入り、会員の大多数を占める俳優人気が高いことも証明している（ただしアメリカ映画俳優組合賞ではキャスト賞候補を落としている）。言い換えるなら、各分科会からこれ以上ない、最高の支持をノミネート段階で受けているのだ。当然本命と考えられる。 　不安があるとするなら、口の利けない女性と謎の生命体が人種を超えた交流を図るというファンタジー要素だろうが、多様性云々が大きく叫ばれる今の時代を考えれば、むしろプラスに働くのではないかと思われる。ただ、多様性云々にも通じることではあるのだが、今年はセクハラ告発に端を発した女性の人権問題がより大きなトピックとして、映画界に限らず取り上げられていることは忘れてはいけないだろう。そこで『スリー・ビルボード』だ。 　この作品の主人公は娘をレイプで殺された母親。警察の怠慢な捜査に業を煮やした彼女が、警察を挑発することから起きる出来事が綴られる。母親 vs. 警察。もちろんそんな単純な構図には落とし込まれない。人間誰しもが持つ人権の大切さは大前提としてあるものの、そこに留まることなくグレイゾーンでしか生きられない人間という生き物の難しさを射止め、かつその先にある仄かな希望を見つめている。昨今「ブーム」になってしまった感のある「#MeToo」運動支持者が肩入れし易い内容に見えて、案外盲目的な彼らの痛いところを突く展開なのも、一歩先を行く先進性を感じさせる。タイムリーと言うなら、『シェイプ・オブ・ウォーター』より『スリー・ビルボード』なのではないか。尤も、『スリー・ビルボード』は監督賞から漏れている。この痛い事実は見逃してはいけない点だ。 　もちろん「女性」というキーワードを考えれば女性パワー炸裂の『レディ・バード』も一定の支持があるだろう。アフリカ系は『ゲット・アウト』の革新性に胸を熱くするかもしれない。昔ながらの映画ファンは戦争映画『ダンケルク』に安心することが考えられる。ただ、BUZZは今のところ静かだ。 　『君の名前で僕を呼んで』『ウィンストン・チャーチル ヒトラーから世界を救った男』『ファントム・スレッド』『ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書』のBUZZは既に消滅している。上位作品をひっくり返すことは難しい。 　…というわけで、世間は『シェイプ・オブ・ウォーター』勝利を信じる向きが多い。ただ、社会の空気に敏感なオスカーでは『スリー・ビルボード』が予想以上に善戦してもおかしくない。アメリカ製作者組合賞、アメリカ監督組合賞は『シェイプ・オブ・ウォーター』が勝利した。けれど、猛追する『スリー・ビルボード』は、『シェイプ・オブ・ウォーター』のすぐ背後まで迫っている。ほら、英国アカデミー賞の主役となったのは『スリー・ビルボード』ではないか。

Prediction Chart

			％	Final	2/21	2/16	2/11	2/6	2/1
1		スリー・ビルボード	25	1	2	2	2	3	4	対抗
2		シェイプ・オブ・ウォーター	25	2	1	1	1	1	1	本命
3		ゲット・アウト	15	3	3	3	4	4	3	大穴
4		レディ・バード	13	4	4	4	3	2	2	大穴
5		ダンケルク	10	5	5	5	5	5	5	超大穴
6		君の名前で僕を呼んで	7	6	6	6	6	6	6	Happy to be Nominated
7		ファントム・スレッド	3	7	7	7	7	8	9
8		ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書	1	8	8	8	8	7	7
9		ウィンストン・チャーチル ヒトラーから世界を救った男	1	9	9	9	9	9	8

List of Marks

君の名前で僕を呼んで	4部門ノミネート（＊）	2.5
	ハリウッドのあるロサンゼルス映画批評家協会賞受賞（＋）
	監督賞、編集賞の候補から漏れてしまった…（−）
	期待された助演男優賞Wノミネートもアウト（−）
	新星ティモシー・シャラメのフレッシュさの勢いに乗って！（＋＋）
	脚色賞受賞は確実？この部門が強い映画は面白い（＋＋）
	同性愛を扱った作品を2年連続で頂点に選びますか？（−）
ウィンストン・チャーチル ヒトラーから世界を救った男	6部門ノミネート（＋）	0.5
	前哨戦は目立たず。ゴールデン・グローブ賞候補も逃す（−）
	監督賞、脚本賞、編集賞…押さえるべき部門、全てアウト（−−）
	ゲイリー・オールドマンは主演男優賞の大本命。そちらに票が集中（−）
	オスカー会員は実在の人物が大好き（＋＋＋＋）
	でもチャーチルは英国の人物。アメリカファーストの国ですから（−）
	おそらくメイキャップ＆ヘアスタイリング賞も獲れる。この部門は我慢（＊）
ダンケルク	大健闘8部門ノミネート（＋）	2.5
	地味にフロリダ映画批評家協会賞受賞（＊）
	予想はされていたが、脚本賞を落としてしまった（−）
	戦争ドラマはオスカー好みのど真ん中（＋＋＋）
	受賞の現実味があるのは撮影賞、編集賞、録音賞、音響効果賞（＋）
	いや、完全シャットアウトの危険もありそうな…（−）
	クリストファー・ノーラン映画はオスカー受けし難い…んでしょう？（−）
ゲット・アウト	4部門ノミネート（＊）	3.5
	監督賞候補は良かった。でも編集賞も候補入りしたかった（＋−）
	たくさんの批評家賞を受賞。地方のものばかりだけれど…（＋）
	2月公開なのに候補入りしたのは、それだけ評価されているから（＋）
	人種問題を実にユニークな切り口で取り上げている（＋＋＋）
	でもコメディ・ホラー仕立てなのは会員の好みではないはずで…（−）
	その年の頂点に選ぶには違和感を感じる人も多いかも…（−）
レディ・バード	5部門ノミネート（＋）	3.5
	予測通りだが、編集賞候補漏れが厳しい（−）
	ゴールデン・グローブの他、全米、NY、シカゴの批評家賞受賞（＋＋）
	サクラメントに住む少女の物語。オスカー向き…ではない（−）
	でも、今年は女性の年。選ぶのに最適ではないかとの声（＋＋＋＋）
	そうすると、『スリー・ビルボード』に票を奪われるかも（−）
	女が単独主役作の戴冠は「ミリオンダラー・ベイビー」（04年）が最後（＊）
ファントム・スレッド	6部門ノミネート（＋）	2.0
	前哨戦は全てノミネート止まり（−）
	と言うか、まさかのサプライズノミネート。驚いたねぇ（＋＋）
	つまりそれは、さほどBUZZが盛り上がっていなかったということ（−）
	さらに言うなら、ポール・トーマス・アンダーソン人気が高いということ（＋）
	ダニエル・デイ＝ルイスの引退作。これで見納めですよ！（＋）
	イギリスのファッションデザイナーの物語。オスカーはアメリカの賞（−）
ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書	2部門ノミネート（＊）	1.5
	えっ、2部門？賞狙い映画なのに、少過ぎ！（−）
	監督賞も脚本賞も編集賞もアウトでは…（−−−）
	ナショナル・ボード・オブ・レヴュー受賞で賞レースの先陣を切る（＋）
	でもその後の尻すぼみ感が凄かった。うーん…（−）
	ドナルド・トランプ政権下において、意味のある内容（＋＋＋）
	オスカーは社会的に意義の大きな映画を愛する傾向（＋＋）
シェイプ・オブ・ウォーター	最多13部門ノミネート。他作品を候補数で圧倒（＋＋＋）	8.0
	製作者組合賞、ブロードキャスト映画批評家協会賞制覇（＋＋＋）
	監督賞、脚本賞、編集賞も押さえたのは本作だけ（＋＋＋）
	賞レース開始前から混戦の中でも本命との呼び声は高かった（＋）
	口の利けない女性と謎の生物の恋…はオスカー好みではない（−−）
	が！多様性が求められる今の時代にぴったりの映画とも言える（＋＋＋）
	映画俳優組合賞でキャスト賞候補から漏れている意味は…（−−−）
スリー・ビルボード	6部門7ノミネート（＋）	7.5
	監督賞から候補漏れしたのが痛過ぎる（−−）
	ゴールデン・グローブ賞受賞のインパクト（＋＋）
	映画俳優組合賞でも大旋風。つまり俳優人気が高い（＋＋）
	人権とそれへの向き合い方を強く訴える。実にタイムリー（＋＋＋）
	おそらくMeToo運動に疑問を感じている人も票を入れやすい（＋）
	ライヴァル作品より賞好み（＊）

The Nine Nominees　ノミネート作品　［I guessed 7/9］
君の名前で僕を呼んで　Call Me by Your Name
	配給：ソニー・ピクチャーズ・クラシックス　　監督：ルカ・グァダニーノ
	Nominees 作品、監督、脚色、主題歌（4部門）
	Precursors LAFCA
	サンダンス映画祭で水飛沫を上げた瑞々しいドラマが、BUZZを持続、見事ノミネーションを手にした。今年も最もフレッシュなノミニー、ティモシー・シャラメを中心に、圧倒的映像美が炸裂する。
ウィンストン・チャーチル ヒトラーから世界を救った男　Darkest Hour
	配給：フォーカス・フィーチャーズ　　監督：ジョー・ライト
	Nominees 作品、主演男優、撮影、美術、衣装デザイン、メイキャップ＆ヘアスタイリング賞（6部門）
	Precursors None
	賞レース序盤は苦戦した。ゲイリー・オールドマンの主演男優賞に注目が集中したのが原因だ。しかし、組合賞でBUZZが復活。候補入りは、単なる再現映画ではないというオスカー会員の声の表れか。
ダンケルク　Dunkirk
	配給：ワーナー・ブラザース　　監督：クリストファー・ノーラン
	Nominees 作品、監督、撮影、編集、美術、録音、音響効果、作曲（8部門）
	Precursors FFCC
	昨年「ハクソー・リッジ」が手に入れた戦争ドラマ枠を獲得。長年オスカーで冷遇されてきたクリストファー・ノーランが遂に栄光を手にするか。技ありの編集術を武器にした新感覚戦争映画だ。
ゲット・アウト　Get Out
	配給：ユニヴァーサル　　監督：ジョーダン・ピール
	Nominees 作品、監督、主演男優、脚本（4部門）
	Precursors ISA、WFCA、PFCC、AFCC、SDFCS、KCFCC、SFCA、SFCS、NCFCA、OFCC、AFCA...
	2月公開。ホラー。コメディ。インディーズ。…賞レースではあまりプラスにならない要素を抱えながら、大健闘のノミネート。人種差別にこんな斬新な角度から斬り込んだ映画は他になかった。
レディ・バード　Lady Bird
	配給：A24　　監督：グレタ・ガーウィグ
	Nominees 作品、監督、主演女優、助演女優、脚本（5部門）
	Precursors GGA、NSFC、NYFCC、CFCA、IFJA、COFCA、HFCS、IFCA、GFCA、DFCS2、VFCC
	サクラメントに住む少女の成長物語。大凡オスカー好みとは思えないが、その瑞々しく生き生きした物語がアメリカを魅了した。女性の存在に大きな光が当てられた年。なるほど相応しい映画だ。
ファントム・スレッド　Phantom Thread
	配給：フォーカス・フィーチャーズ　　監督：ポール・トーマス・アンダーソン
	Nominees 作品、監督、主演男優、助演女優、衣装デザイン、作曲（6部門）
	Precursors None
	ノミネーション最大のサプライズは本作の急浮上だ。監督賞や助演女優賞でも候補に挙がる大逆転。いやしかし、元々評価は抜群だった。むしろ前哨戦の停滞が不思議と言うべきかもしれない。
ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書　The Post
	配給：20世紀フォックス　　監督：スティーヴン・スピルバーグ
	Nominees 作品、主演女優（2部門）
	Precursors NBR、NTFCA
	1971年ベトナム戦争に関する米国防総省の極秘文書をめぐる攻防。急ピッチで完成に至ったのは、今現在、この瞬間に観るべき映画だと考えられたからだろう。ただ、候補は2部門だけ？
シェイプ・オブ・ウォーター　The Shape of Water
	配給：フォックス・サーチライト　　監督：ギレルモ・デル・トロ
	Nominees 作品、監督、主演女優、助演男優、助演女優、脚本、撮影、編集、美術...（最多13部門）
	Precursors PGA、BFCA、DFFCA、SLFCA、PFCS、LAOFCS、PFCC2
	口のきけない研究員の女と水陸両生の男の奏でる恋。差別・多様性がこれまで以上に取り沙汰される今のアメリカでは、とりわけ感じるものがあるのかもしれない。ギレルモ・デル・トロの美学を堪能せよ。
スリー・ビルボード　Three Billboards Outside Ebbing, Missouri
	配給：フォックス・サーチライト　　監督：マーティン・マクドノー
	Nominees 作品、主演女優、助演男優（×2）、脚本、編集、作曲（6部門7ノミネート）
	Precursors BAFTA、GGA、GSA、LVFCS、NFCS、HFCS2、LFCC、PFCC2
	娘を殺された母親の戦いのドラマは、人権問題に大きく揺れる世界を読んでいたかのようにタイムリー。発せられるメッセージは、他のどの作品よりも力強く響きそうな気配。監督賞候補漏れを挽回へ。

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