| Final Predictions | |||||||||||||||||||
| ベルファスト | コーダ あいのうた | ドント・ルック・アップ | ドライブ・マイ・カー | DUNE／デューン 砂の惑星 |
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| △ | ◎ | ||||||||||||||||||
| ドリームプラン | リコリス・ピザ | ナイトメア・アリー | パワー・オブ・ ザ・ドッグ |
ウエスト・サイド・ ストーリー |
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| ○ | |||||||||||||||||||
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| 今年から候補枠が10本に固定された作品賞。アカデミーとしては「007／ノー・タイム・トゥ・ダイ」や「スパイダーマン：ノー・ウェイ・ホーム」といったエンターテイメント大作が候補入りすることを願ってのルール変更のようだが、無念、結局かすることもなく終わった。そして10本全てに受賞の可能性があるとも言えず、早々と脱落が決まった（と思われる）作品もある。例えば『ドント・ルック・アップ』ドリームプラン』『リコリス・ピザ』『ナイトメア・アリー』あたりは既に敗退色濃厚。『DUNE／デューン 砂の惑星』や『ウエスト・サイド・ストーリー』も厳しいだろう。 敢えて上には挙げなかった、日本映画『ドライブ・マイ・カー』も受賞は非現実的だ。ノミネーション発表時には確かに話題を呼んだ。けれど、各組合賞で候補入りを逃したのが痛かったか、興行成績が劇的に伸びることもなく、BUZZは急下降、誰も受賞の可能性について話していないのが現状だ。10本の中では極めてアート色が強く、異質な気配は大いに武器になると思われるが、さすがにオスカーがこの手のアート映画を熱烈に愛するとも思えない。ちなみに何かと日本で比較されがちな「パラサイト 半地下の家族」（19年）は芸術的かつ娯楽的な内容、各組合賞でノミネートされ、アメリカ映画俳優組合賞ではキャスト賞を受賞している。それにも拘らず、作品賞受賞の本命とは目されていなかった。『ドライブ・マイ・カー』の比較対象としてナンセンスであることが良く分かる。 …となると残るのは『ベルファスト』『パワー・オブ・ザ・ドッグ』、そして『コーダ あいのうた』だ。3本とも映画祭でBUZZを沸騰させ、それを維持したまま現在に至る。ベルファストはトロント映画祭、『パワー・オブ・ザ・ドッグ』はヴェネチア映画祭、『コーダ あいのうた』はサンダンス映画祭で賞レース参戦に名乗りを上げた。 この内、最もオスカー好みなのが『ベルファスト』なのは異論ないだろう。1960年代ベルファスト、監督のケネス・ブラナーの自伝的要素の濃いファミリー・ドラマ。郷愁をかき立てられた老会員たちがこぞって投票すると思われる。また、トロント映画祭で観客賞を受賞しているのも心強い点で、同賞を受賞した作品がそのままオスカー受賞に辿り着いた例を挙げると、「ノマドランド」（00年）「グリーンブック」（18年）「それでも夜は明ける」（13年）「英国王のスピーチ」（10年）と枚挙にいとまがない。 『パワー・オブ・ザ・ドッグ』は前哨戦の主役だった。ゴールデン・グローブ賞や批評家賞を次々受賞。ニューヨークやロサンゼルス、ボストンといった重要批評家賞は逃しているが、これは『ドライブ・マイ・カー』が突然変異的に浮上したためで、『ドライブ・マイ・カー』の存在がなければそのまま受賞したことだろう。近年は批評家の好みとオスカーの好みが近づいてきている。最多ノミネーションを獲得しているのはその表れと言えようか。 『コーダ あいのうた』は所謂フィールグッド・ムービーだ。聾唖の家族の中で唯ひとり耳が聞こえるヒロインが、自分のための人生を生きていく様を描く。本来フィールグッド・ムービーは賞受けしないものなのだが、それを跳ね除ける快走。アメリカ映画俳優組合賞ではキャスト賞を受賞し、急激に注目度を上昇させている。オスカー会員と投票者の多くが被っているSAGでの勝利はとても大きい。受賞スピーチが印象的だったのもプラスに働く。 三つ巴レースは熾烈を極めているが、普通に考えれば『パワー・オブ・ザ・ドッグ』だ。マッチョ至上主義の粉砕は、そのまま西部劇神話の粉砕に繋がり、さらにはそこから西部劇再構築が始まる。西部劇が描いてきた男らしい男の姿が見えないあたり、老会員は面白くないのかもしれないが、そんなことを言っていては多様性社会に取り残されてしまう。今こそ会員も個が生き生きと生きる社会へのメッセージを送るときだ。 ただ、それを言うなら『コーダ あいのうた』の受賞もあり得るのではないか。この映画は聾唖の役を実際に聾唖の俳優が演じているのもポイントで、多様性が人種だけに限られてたものではないことを考えれば、やはり重要な意味を持っている。この映画はしかも、おそらく嫌う人がいないタイプの映画。どの世代の会員からも満遍なく票を獲得するかもしれない。尤も、候補の段階で監督賞、編集賞候補から外れているのは大きなマイナスだ。 実は最終投票間際になって『パワー・オブ・ザ・ドッグ』のバックラッシュが目立っている。やはり昔ながらのマッチョ幻想は存在するのだ。サム・エリオットが強烈な言葉を使って、同作を批判したのは記憶に新しい。ただしこのバックラッシュ、つまりは人気が高いことの表れでもあり、とするならば会員たちの多くが『パワー・オブ・ザ・ドッグ』擁護に回っても不思議ではない。果たして…。 ※追記1。『パワー・オブ・ザ・ドッグ』にトラブル発生。ブロードキャスト映画批評家協会賞授賞式でジェーン・カンピオンがテニスのウィリアムス姉妹の功績を軽んじるような発言をしてしまった。ひょっとするとその反発が出るかもしれない。『コーダ あいのうた』『ベルファスト』が票を伸ばす可能性が出てきた。 ※追記2。英国アカデミー賞は『パワー・オブ・ザ・ドッグ』が勝利した。しかし、それよりも印象的だった画は助演男優賞を獲った『コーダ あいのうた』のトロイ・コッツァーが壇上に上がったときだ。もちろん拍手が沸き起こったのだが、同時に会場では両手を肩まで上げて手の平をパタパタさせる人がたくさんいて、それはそれは綺麗だったのだ。手の平のパタパタはもちろん、手話で拍手の意味がある。あれを自分もやってみたい。あれをオスカーでも見てみたい。あれが授賞式の最後に巻き起こったら、それはそれは今年のオスカーを象徴する画になるだろうなぁと思ってしまったのだ。同じように感じる会員は少なくないのではないか。あぁ、『コーダ あいのうた』の勢いを感じる。 |
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