Column コラム
| アカデミー賞に関する管理人の雑文です。 |
| last update: December 10, 2022 |
| ■第80回ゴールデン・グローブ賞 ノミネーション予想 （2022.12.10） | |||||||||
| ゴールデン・グローブ賞が帰ってきます。主催するハリウッド外国人記者協会（HFPA）の問題が次々に明るみになり、昨シーズンの授賞式は簡素に。テレビでの放送は見送られました。問題はまだまだ山積みですが、少しずつHFPAも前進しているということでしょうか。 賞レースファンとしてはゴールデン・グローブの復活は歓迎したいところではあるのですが、HFPAは極めて難しいふたつの問題に対処しなければなりません。ウィル・スミスとブレンダン・フレイザーの問題です。 スミスは昨年のオスカーでプレゼンターのクリス・ロックを平手打ちし、世界中から顰蹙を買いました。アカデミーは10年間アカデミーへの出入りを禁じています。そのスミスが新作『自由への道』を携えて賞レースに間髪入れず復帰します。依然スミスへの風当たりは強いのですが、作品自体の出来映えやスミスの演技にはまずまずの称賛が集まっています。とりわけスミスの演技は評価が高く、つまり通常なら賞に絡んでおかしくないのです。ですがもし仮にスミスを候補入りさせたらどうでしょう？演技への評価と不祥事を絡めるべきではないという意見はもちろんあるでしょうが、ゴールデン・グローブは暴力を振るった者をわざわざ讃える賞だと非難の声が挙がるかもしれません。大型映画賞の先陣を切るがゆえの難題に直面するのです（他賞はゴールデン・グローブの反応を見ることができます）。 余談になりますが、候補に挙がった場合、スミスもまた、頭を悩ませることになるでしょう。オスカーは出入り禁止なので考える余地はありませんが、けれど、他の授賞式は？ロックとの和解もままならぬ状態で出席となれば、世間のスミスに対するイメージはどう転ぶのか、まだ誰も読めない状態です。 フレイザーは長らく映画のメジャーシーンから遠ざかっていました。そしてフレイザーはその理由を、#MeToo運動が盛り上がったとき告白しました。2013年、ゴールデン・グローブ主催のランチョンパーティでフレイザーは、当時の会長フィリップ・バークからセクシャルハラスメントを受けたというのです。フレイザーはバークに下半身を触られ、そのショックが強過ぎて仕事から遠ざかることになってしまったというのです。バークはこの告発を完全否定しました。HFPAは調査で「バークがフレイザーの下半身を触ったのは事実だが、単なるジョークに過ぎず、問題はない」と結論づけました。以来、フレイザーとHFPAの間には大き過ぎるしこりが残っているのです。ちなみにバークはその後、別の不祥事が発覚した際に、HFPAから追放されています。フレイザーは候補に挙がったとしても授賞式には出席しないと宣言していますが、ゴールデン・グローブはそれでも彼を候補に挙げるでしょうか。候補に挙げなければあからさまな態度が批判を受けるかもしれません。候補に挙げればフレイザーの告発に屈した印象になるかもしれません。 さて、そんなこんなで今年も全く深く考えず、主要9部門のノミネート予想をしてみました。
ゴールデン・グローブと言うと、やっぱりコメディ／ミュージカル部門に注目したいところ。そして今年の主役は『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』と言って間違いないでしょう。大凡賞好みとは言えない内容ながら、ドラマ部門も含め最多候補の可能性すら秘めています。この勢いは数年前の「パラサイト 半地下の家族」（19年）に似たものを感じるのですが、気のせいでしょうか。BUZZ作りが上手く行けば、『フェイブルマンズ』を追い抜いて、オスカー作品賞にすら輝くかもしれない。そのためにはここでで確かな足跡を残しておきたいところでしょう。 なお、個人的には『ミセス・ハリス、パリへ行く』を応援していますが、作品賞候補までは無理でしょうか。せめてレスリー・マンヴィルが主演女優賞候補に挙がって欲しいなぁ。 皆さんも気楽に、遊び気分で予想してみてはいかがでしょう？ |
| ■8月までに公開された作品の中でオスカーの可能性があるのは…？ （2022.09.09） | ||||||
| 毎年録画したアカデミー賞授賞式を何度か観返します。細かい見落としがないかチェック、その結果、一回目は気づかなかった候補者やプレゼンターの表情を新たに発見することも多いのです。面白い映画がそうであるのと同様、オスカー授賞式もまた、繰り返し楽しめるのです。 …が、実は第94回アカデミー賞授賞式に関しては、たった1回、生放送で観ただけです。録画はしてあるのですが、どうしてももう一度見る気にならないのです。理由は言わずもがな…主演男優賞候補者のひとりが壇上でプレゼンターを殴打する事件が起こり、それが頭にこびりつき、未だにそれに抵抗感を感じるのです。そこを飛ばしてチェックすれば良いのではないかとも思いますが、そうする気すら失せるほど、個人的には衝撃的な事件でした。まさに悪夢。当事者だけでなく、目撃者まで闇に引きずり込む、前代未聞の悪夢。 方々から次々非難の声が挙がり、事件を起こした者が10年間アカデミーへの立ち入りを禁止されたのは当たり前ですが、それだけで記憶は消えてくれません。加害者を擁護する声が、ここ日本で続出したのも、いよいよ頭痛を悪化させました。彼らは言うのです。言葉の暴力は良いのか。俺だって同じことをする。私はスカッとした。本気で言っているのでしょうか。言葉の暴力が良いわけがない。でも、けれど、しかし、それを理由に肉体的な暴力をふるって良いわけがない。この出来事に関して「加害者の気持ちは分からなくもない。でも暴力は絶対にダメだ」と言い切る論調すらほとんど見られない日本はどうなっているのでしょうか。被害者が怪我をしたり、或いは命を奪われたりすれば（日本で起こったあの陰惨な事件のように）、彼らも冷静な態度を取れるのでしょうか。現実の暴力に対する感覚が決定的に鈍い、鈍過ぎる。そんなに暴力に敏感ではアクション映画なんて楽しめない？それについてはまた、別の機会に書きましょう。 おそらくこの事件の、あのときの映像は次回以降のオスカーを観るときにも思い出してしまうことでしょう。式に対して変な緊張感を持って臨まなければならないなんて、本当に不幸な話。アカデミーにはそれを吹き飛ばしてしまうくらいの、これぞオスカーと言いたくなる祭典を演出して欲しいものですが、噂では今回の被害者にホストを依頼する話があるとかないとか。うーん、さすがにそれは視聴者の好奇心を充てにしたチョイスでしかないような…。それにそれこそ、彼の顔が映る度、事件のことを思い出してしまいそうです。さてさて…。 ところで、今年はここまでどんな作品が支持されたのでしょうか。今回は第95回アカデミー賞（主要6部門）が9月上旬に開かれたとしたらどうなるか考えてみました。対象は今年の1月から8月までに公開された作品となります。対象期間が短いので、作品賞は5作品を選びました。もちろん違う意見の方も多いでしょうが、それほど大差ないはずです。
予想した中で特に賞レース参戦が確実視されているのは『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』。インディーズのSF映画という、大凡賞向きではない映画ですが、主演女優ミシェル・ヨーのBUZZを中心に依然健闘が期待されています。大ヒットも心強いところ。賞向きでないと言えば『トップガン マーヴェリック』もそうです。アメリカ、そして日本を中心に特大ヒットに発展した人気作の続編。世間の盛り上がりを無視できないほどに強力なBUZZが出来上がっています。少なくとも技術賞候補は確実、作品賞候補も狙えない位置ではないはずです。その他、演技賞では『エルヴィス』のオースティン・バトラーの主演男優賞候補が大いに期待できそうです。 さて、最後に反省を！実は昨年この欄の有力候補として「コーダ あいのうた」のトロイ・コッツァーの助演男優賞を予測していないのです。作品を観れば、受賞も当然のパフォーマンスだったわけですが、あぁ、作品を観ないままの予想がBUZZを見誤らせました。今年はそんなことのないよう気をつけたつもりですが…果たして？ さて、この中から誰が勝ち抜けるでしょうか（*はその可能性が低くないコンテンダーです）。 ［追記］殴打事件の被害者であるクリス・ロックはアカデミーからの次回ホストのオファーを断ったとの一部報道が出ています。 |
Past Report -95th Annual Academy Awards-