Column コラム
| アカデミー賞に関する管理人の雑文です。 |
| last update: December 07, 2023 |
| ■第81回ゴールデン・グローブ賞 ノミネーション予想 （2023.12.07） | |||||||||
| ここ数年のゴールデン・グローブ賞のゴタゴタは全く面白くありませんでした。主催するハリウッド外国人記者協会（HFPA）の倫理問題が嘆かれ、多様性の欠如が糾弾されました。いくつかの改革を経て、昨年より通常開催に戻った…と思われましたが、いやー、賞主催の権利が売却され（売却先は投資会社エルドリッジ・インダストリーズと制作会社ディック・クラーク・プロダクションズ）、HFPAが解散してしまうとは…。昇るのには時間がかかりますが、堕ちるのはアッという間だなぁ…と人生の真理を感じたり…。はい、大袈裟。 ちなみにゴールデン・グローブ賞自体は今後も続行、投票権を持つ会員にも変更はありません。そして指摘されていた会員構成はどうなったかというと…、総会員数は300人にまで膨れ上がり、男女比が男性53％、女性47％となった他、非白人系が6割となりその内ラテン系が26.3％、アジア系が13.3％、黒人系が11％、中東系が9％に改善されたとのこと。まだ、黒人系が全体の1割？…という気もしますが、それまでがゼロですからね。まあ、頑張っていると言えば、頑張っていると言えるでしょうか。さあ、黒人ジャーナリストの皆さん、今が会員になる狙い目だと思われます。オスカーだって、多様性を掲げるため、ここ数年、大きな実績のない映画人が続々会員入りしていますしね！ しかしねー、思うのですが、多様性が欠如しているのは絶対ゴールデン・グローブ賞やオスカーだけじゃないでしょう。乱立する各批評家団体や主要映画賞主催団体、ビクビクしているんじゃないかなぁ。関係者の皆さん、叩かれる前に頑張って下さいよ。ただでさえ、賞が多過ぎると指摘されているのですから。 さて、そんなこんなで今年も全く深く考えず、主要9部門のノミネート予想をしてみました。
今年はコメディ／ミュージカル部門も充実していて、そのままオスカー候補を狙えそうなコンテンダーがひしめき合っています。そのためゴールデン・グローブ賞ならではの予想は少なめになりました。ティモシー・シャラメ（ウォンカとチョコレート工場のはじまり）やジェニファー・ローレンス（マディのおしごと 恋の手ほどき始めます）あたりが、オスカーは絶対無理でもゴールデン・グローブなら…という予想になります。本当はもっとハリウッドらしいコメディ映画をねじ込みたいのですが…。 皆さんも気楽に、遊び気分で予想してみてはいかがでしょう？ |
| ■8月までに公開された作品の中でオスカーの可能性があるのは…？ （2023.09.08） | ||||||
| 今年の映画界最大のトピックは、アメリカ映画俳優組合（SAG）とアメリカ脚本家組合（WGA）によるストライキでしょう。WGAが5月から、SAGが7月からストに入りましたが、この2団体が同時にストに突入するのは約60年ぶりだとか。配信時代に入り、AIの進化が止まらない現代。ストリーミングとAIに対する向き合い方が争点…と大雑把に言うことができるでしょうか。 ストの影響はメジャー映画製作がストップするだけに留まりません。オスカーファンが気にするべきはまず、エミー賞授賞式の延期です。TV界のアカデミー賞と言って良い大型賞。毎年9月に開催されていましたが、今回は来年１月へと延びてしまいました。いや、受賞者の行方にはほとんど影響は出ないでしょう。最終投票自体は8月17日から28日の間に終わっているからです（つまり投票が終わってから、4カ月後に発表というおかしな事態）。ただ、1月はそう、オスカーレースの真っ只中なのです。ゴールデン・グローブ賞、ブロードキャスト映画批評家協会賞と並び、エミー賞が大々的に開かれるということです。 近年劇場用映画とTV作品の境界はほとんど見えなくなりました。TV作品に出たからと言って「格が落ちた」…なんて思われることはありません。むしろスターたちは良質作を探して積極的にTV作品に出演しています。つまりエミー賞に出席するTVスターの多くは、映画スターでもあるのです。そしてつまりエミー賞授賞式が、映画賞レースのアピールの場になり得るということです。 「一流シェフのファミリーレストラン」でドラマ部門主演男優賞最有力と囁かれるジェレミー・アレン・ホワイトは、ザック・エフロンの兄弟に扮した『The Iron Crow』により映画でもブレイクを狙います。「George & Tammy」の演技が注目されるジェシカ・チャステインは『あの歌を憶えている』で再びオスカーの頂点を窺い、共演のマイケル・シャノンは『ザ・バイクライダーズ』により注目されること必至と言われています。また、「愛と死」で3度目のエミー候補となったジェシー・プレモンスは、マーティン・スコセッシ映画『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』が控えています。「キング・オブ・メディア」に助演したアレクサンダー・スカルスガルドは、『Lee』により初オスカーノミネーションを手にしたいところです。 エミー賞が1月開催になったことで、他の映画賞授賞式にもより多くのスターが集まる可能性も指摘されています。LA在住ではないスターも、ひとつの授賞式のためにわざわざLAに来るのではなく、他の賞もあるのなら…と来やすくなるのではないか…ということです。そしてそうなることで、映画賞キャンペーンは例年より激化するかもしれません。各授賞式プレゼンターを引き受けるAリストスターも多くなるかもしれません。尤も、ストの影響で他の映画賞の開催の延期も大いにあり得る話だと思われますが…。 ストの影響でメジャー映画が軒並み公開延期になっているのも注目すべき点。脚本家はともかく、映画の中心に立つスターたちがプロモーションに参加できないのが痛い。スタジオが恐れるのは、プロモーション不足による期待作の興行的不振です。せっかく大金を投じて作り上げた我が子たちなのに、大衆に知られることなく、いや利益を出すことなく消えていくことだけは、どうしたって避けたいのです。そのためにはスト終了まで作品の封切りを遅らせるしかない。賞も欲しいけれど、金はもっと欲しい。それがスタジオの本音です。名誉と金、スタジオのふたつの大好物が天秤にかけられたのが今の状況です。メジャー大作が賞レースから撤退することで得をするのは誰か。もちろんスト前後までに封切られた作品です。 ところで、今年はここまでどんな作品が支持されたのでしょうか。今回は第96回アカデミー賞（主要6部門）が9月上旬に開かれたとしたらどうなるか考えてみました。対象は今年の1月から8月までに公開された作品となります。対象期間が短いので、作品賞は5作品を選びました。もちろん違う意見の方も多いでしょうが、それほど大差ないはずです。なります。対象期間が短いので、作品賞は5作品を選びました。もちろん違う意見の方も多いでしょうが、それほど大差ないはずです。
今年は既に3本の映画が賞レース参戦をキメていると言って良いでしょう。サンダンス映画祭で話題沸騰の『パスト ライブス／再会』、そして夏の映画界をこれ以上ない最高の形で盛り上げた、同日公開の『バービー』『オッペンハイマー』です。3本とも依然元気にBUZZを盛り上げています。 でも、『バービー』と『オッペンハイマー』、日本では悪い意味で目立ってしまいました。2本の超大作が同日公開ということで、アメリカでは随分前から話題になっていました。その内SNS上では2本を「Barbenheimer」として一緒に語ることが多くなりました。メディアはそれを面白がり、多くの記事の中にこの言葉が溢れました。配給会社はと言うと、「Barbenheimer」を上手く利用すれば、大ヒットに繋がることを確信、積極的に「Barbenheimer」を発信しました。そしてその読みと期待は見事的中、2本ともが社会現象と言って良い爆発的ヒットへと発展しました。 この流れで起きたのが、原爆によるキノコ雲を背景にバービーが微笑むコラージュ画像の拡散でした。そして『バービー』を配給するワーナー・ブラザースがX（旧Twitter）上で、それに対して「イイネ！」をマークしたことでした。「Barbenheimer」という言葉自体を広めるのは、特に何とも思いません。2大大作の衝突を面白可笑しくくっつけただけに過ぎないでしょう。ただ、コラージュ画像にはとてつもない嫌悪感を感じます。そして「It's going to be a summer to remember（忘れられない夏になる）」というコメント付きの「イイネ！」なのが決定的に不愉快です。この原爆ミームだけでも、日本人としては耐えられない。けれど…もっと引っ掛かることがあります。 それは、前々から感じていたことですが、原爆に対する認識の甘さです。日本人が恐れるようには、アメリカ人を含む他の国の人々は原爆を恐れてはいないのです。コラージュ画像も、「イイネ！」も、「忘れられない夏になる」もきっと、悪意の先にあるものではないのです。彼らは本当に軽いジョークのつもりで、或いは何も考えることなく、愚行に走ったのではないか、ということです。長らく映画を見ていると嫌でも気づかされます。現実では核を落とされたのは日本だけですが、TVや映画の中では何度核が爆発したことでしょう。そしてその度に何度間違ったメッセージが送られたことでしょう。「トータル・フィアーズ」（02年）ではジャック・ライアンがあっさり衝撃波に見舞われました。「24 TWENTY FOUR」（01〜10年）ではジャック・バウアーが被ばく同然の状況下を逞しく生き延びます。「インディ・ジョーンズ クリスタル・スカルの王国」（08年）ではインディ・ジョーンズが冷蔵庫の中に隠れて難を逃れます。これらはほんの一例に過ぎません。 コラージュ画像の制作者も、「イイネ！」した配給会社のSNS担当も、こんなに叩かれるとは…という心境でしょう。もちろんだから許されるというわけではありませんが…。大体、キノコ雲が、例えばハーケンクロイツに差し替えられていたって、こういう輩は同じ間違いを犯すものかもしれません。それにしても…この画像を大きく問題視しているのが、ほとんど日本だけというのが、あぁ、世界の核に対する認識の表れと言えるのでしょう。どうしたら核の真の恐ろしさが伝わるのだろうと考え込んでしまいます。 あぁ、長くなり過ぎました。何が言いたいかと言うと、『バービー』も『オッペンハイマー』も日本からの抗議を気にすることなく、賞レースに参戦してくるだろうということです。『バービー』はとてもよく練り込まれた映画です。『オッペンハイマー』は原爆の被害描写がさらりとしているという報道を見かけたのが気にかかりますが、それよりも何よりも日本劇場公開があるのか、心配です。 さて、この中から誰が勝ち抜けるでしょうか（*はその可能性が低くないコンテンダーです）。 |
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