Predictions -Best Picture-

作品賞

受賞予想（3/5）

Final Predictions
アメリカン・フィクション	落下の解剖学	バービー	ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ	キラーズ・オブ・ ザ・フラワームーン
			〇
マエストロ その音楽と愛と	オッペンハイマー	パスト ライブス 再会	哀れなるものたち	関心領域
	◎		△	△
OSCAR PLANET Prediction オッペンハイマー General Prediction オッペンハイマー My Hope 哀れなるものたち
第96回アカデミー賞は多くのメディアにより『オッペンハイマー』の圧勝が予測されている。それもそのはず、『オッペンハイマー』は最多13部門のノミネート。候補から弾かれたのは視覚効果賞（ショートリスト発表時点でアウト）だけなのだ。これは各分科会に満遍なく支持者がいる証でもあり、必然的に誰もが投票権を持つ作品賞では有利になる。『オッペンハイマー』が狙うのは、「スラムドッグ＄ミリオネア」（08年）以来となる受賞総ナメだ。 　勢いに衰えが見られない『オッペンハイマー』には、真正面から勝負を挑んでも勝てないだろう。批評家賞では『オッペンハイマー』と良い勝負を繰り広げた『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』も厳しいだろうし、『アメリカン・フィクション』『落下の解剖学』『マエストロ：その音楽と愛と』『パスト ライブス／再会』も苦しいはずだ。ただ、真正面からの勝負を避ければ勝利が見えてくる作品は残っている。 ◆Scenario No.1 　ノミネーション発表時に『バービー』が監督賞、主演女優賞から漏れたことが大々的に報道され、SNSではそれに対して批判の声を上げる者が星の数ほど表れた。2023年、社会現象的ヒットを記録、もちろん抜群の評価を獲得したのだから無理もない、か。賞レースを見ていれば監督賞、主演女優賞共に候補ぎりぎりの攻防だったので、落選は不思議ではないのだが、彼らにそんなこと通じない。SNS時代とはそういうものだ。そして『バービー』の結果に不満を持つ者はきっと、オスカー会員の中にもいるのだ。彼らの怒りが作品賞に集まれば、『バービー』大逆転受賞があるかもしれない。近年はかつて作品賞受賞に必要と言われた、監督賞、脚本賞（脚色賞）、編集賞のノミネーションを手にしていなくても、受賞に漕ぎ着けられるようになってきた。 ◆Scenario No.2 　オスカー会員は保守的と呼ばれる。昔からハリウッドが得意としてきた人間ドラマが結局強い。…そう言われるのはおそらく、現在の投票票の仕組みが、「嫌われない」作品が有利になる方式を採っているからだ。そして今年その恩恵を最も得るのは『ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ』だと見られている。会員が愛するアレクサンダー・ペイン映画。年齢・人種・性別の異なる3人の孤独な者たちの交流は、どの年代にもアピールすることだろう。『オッペンハイマー』はおそらく、苦手な人もかなり出るタイプの映画ではないか。 ◆Scenario No.3 　ジェンダー問題は一般社会だけでなく、映画業界でも大いに問題視されているトピックだ。これに果敢に向き合ったのが『哀れなるものたち』で、実は同じテーマに取り組んでいる『バービー』には抵抗がある会員も、こちらには満足できるのではないか。男が牛耳る社会に立ち向かうイノセントな女主人公の自我の目覚めが描かれる。この際武器になるのがセックスというという点でやや拒否反応がありそうな気もするが、芸術的でも娯楽的でもある映画の醍醐味を完璧に纏った作りゆえ、好きな人はとことん好きだと思われる。 ◆Scenario No.4 　ハリウッドはユダヤ社会だ。それゆえか、オスカーではホロコースト物が滅法強い。…となると今年ミラクルを起こす可能性がある作品として気に留めておかなければならないのは『関心領域』だ。収容所の隣で普通の生活を送る家族の物語。昨今の社会情勢を眺めても、ユダヤ云々は会員としても見逃せない要素になるはず。揺るぎない固定支持層が厚いのは、実は本作なのではないかとの見方もある。票が割れた場合、浮上することは大いにあり得る話だろう。 　ただ、いずれのScenarioもウィークポイントがある。作品賞ではなく他部門に票を投じてバランスを取ろうとする動きが出るかもしれないのだ。『バービー』なら主題歌賞、『ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ』なら助演女優賞、『哀れなるものたち』なら主演女優賞、『関心領域』なら国際長編映画賞…。そちらに票が集中すると、いずれも『オッペンハイマー』には届かないだろう。 　『オッペンハイマー』の有利は動かない。クリストファー・ノーランを讃える年。会員も納得しているのではないか。

Prediction Chart

			％	Final	2/29	2/22	2/15	2/8	2/1
1		オッペンハイマー	60	1	1	1	1	1	1	本命
2		ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ	5	2	2	2	3	5	6	対抗
3		哀れなるものたち	5	3	3	3	2	2	3	大穴
4		関心領域	5	4	4	4	6	7	9	大穴
5		落下の解剖学	5	5	5	5	7	8	10	Happy to be Nominated
6		アメリカン・フィクション	5	6	6	8	9	9	7
7		バービー	5	7	7	6	4	4	4
8		キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン	5	8	8	7	5	3	2
9		パスト ライブス／再会	3	9	9	9	8	6	5
10		マエストロ：その音楽と愛と	2	10	10	10	10	10	8

List of Marks

アメリカン・フィクション	5部門ノミネート。悪くない（＋）	4.0
	助演男優賞候補が嬉しいが、監督賞、編集賞は落とす（＊）
	批評家賞はワシントンDCを獲ったのみ（＊）
	トロント映画祭観客賞を受賞してBUZZ沸騰（＋＋）
	ステレオタイプな黒人を求める社会にドロップキック！（＋＋）
	…が、オスカー会員は保守的なはずで…（－）
	…ちゅーか、『カラーパープル』『ラスティン』の立場は…（－）
落下の解剖学	外国語映画なのに5部門ノミネート。上出来（＋＋）	4.5
	しかも監督、脚本、編集の重要部門を全て押さえる（＋＋）
	カンヌ映画祭でパルムドール受賞して勢いづく（＋＋）
	国際長編映画賞フランス出品作には選ばれず（－）
	いや、でもだからこそ票が集まるのではないか（＋）
	いや、支持票はザンドラ・ヒュラーの主演女優賞でしょ（－）
	夫殺しの容疑をかけられた女の物語。その年のNo.1？（＊）
バービー	7部門8ノミネート。候補数としては悪くない（＋＋）	7.5
	あぁ、でも重要な監督、編集…を落としてしまった（－－）
	ついでに主演女優賞からも漏れる悲劇（－－）
	批評家賞は地方でトップに輝く。ちらほら…だけど（＊）
	男社会を痛烈批判。バービーは悪いモデル？この視点！（＋＋＋）
	2023年を代表する特大ヒット。男もバービーに首ったけ（？）（＋＋＋）
	候補での冷遇が大々的に報道。その反動があるかも！（＋＋＋）
ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ	5部門ノミネートの大善戦（＋）	9.5
	監督賞は逃すも、編集賞を押さえてカヴァー（＋）
	オスカー会員はアレクサンダー・ペインが大好き（＋＋）
	主演のポール・ジャマッティに勢いが出てきた相乗効果（＋＋）
	辛辣な作品が並ぶ中、米映画が得意な人間ドラマで目立つ（＋＋）
	重要なボストン映画批評家協会賞で勝利（＋）
	老会員が最も票を入れやすい作品かもしれない（＊）
キラーズ・オブ・ ザ・フラワームーン	10部門。二桁に乗せてきました（＋＋）	4.0
	…が、脚色賞アウト。主演男優賞からも漏れる（－）
	ナショナル・ボード・オブ・レヴュー、NY＆シカゴ批評家賞受賞（＋＋）
	リリー・グラッドストーン、完全ブレイクの功績（＋＋）
	マーティン・スコセッシ映画。自動的に票が入る（＊）
	アメリカの恥を暴く内容。気分を害する会員もいそう（－）
	ひょっとすると受賞ゼロに終わる気配あり…（＊）
マエストロ：その音楽と愛と	7部門ノミネート。大健闘でしょう（＋）	0.5
	監督賞と編集賞を落としたのは痛かったが…（－）
	前哨戦は全て候補止まり。これで受賞したら驚いちゃう（－）
	歴史に残る作曲家とその妻の物語。オスカーは実話好き（＋＋）
	受賞があるとするなら、メイキャップ＆ヘアスタイリング賞？（＋）
	でもブラッドリー・クーパーのつけ鼻メイクが物議を呼ぶ（－）
	Netflix映画。大画面に映える映画なんだけど…（＊）
オッペンハイマー	最多13部門ノミネート。今年の主役（＋＋＋）	11.5
	監督、脚本、編集…重要3部門をコンプリート候補達成（＋＋）
	ゴールデン・グローブ、ブロードキャスト批評家賞勝利（＋＋）
	クリストファー・ノーランが遂に主役に躍り出る（＋）
	ノーラン映画なのに俳優が3人もノミネートされる（＋＋）
	原爆の父ロバート・オッペンハイマー物語。オスカーは実話好き（＋＋）
	怖いのは『バービー』か『ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ』か、それとも…（＊）
パスト ライブス／再会	2部門候補に留まる。でもインディーズ映画としては立派（＊）	3.5
	でも監督賞、主演女優賞にもチャンスはあったはず（＊）
	だってサンダンスや全米映画批評家賞でBUZZ沸騰（＋＋）
	主人公ふたりが韓国系。多様性時代にもマッチ（＋＋）
	ただし、ラヴストーリーはオスカー受けし難い傾向（－）
	日本でやたら大々的に宣伝されるA24映画（＋）
	あぁ、でも今年のA24のNo.1プッシュは『関心領域』へ（＊）
哀れなるものたち	9部門ノミネート。満点に近い（＋＋）	6.0
	欲を言うなら、助演男優賞（ウィレム・デフォー）も欲しかった（＊）
	ゴールデン・グローブ賞で『バービー』を破る！（＋＋）
	ヨルゴス・ランティモスの世界観、じわじわハリウッドに浸透（＋）
	子どもの心を持つ女の描く。今の時代に完璧フィット（＋＋＋）
	エマ・ストーンの圧倒的パフォーマンスに票が流れるか（－）
	正統派…ではない。オスカー決勝でどこまで受けるか、未知数（＊）
関心領域	5部門ノミネート。まずまず（＋）	4.5
	監督賞・脚色賞は嬉しいが、撮影賞、編集賞も獲りたかった（－）
	収容所の隣で暮らす家族の物語。ユダヤ物はオスカーに強い（＋＋＋）
	2023年ヨーロッパ映画の顔の座を『落下の解剖学』と争う（＋＋）
	…が、カンヌもヨーロッパ映画賞もそちらに敗れる（＊）
	注目度抜群ザンドラ・ヒュラーが助演している（＊）
	おそらく国際長編映画賞は決まり。票はそちらへ（－）

The Ten Nominees　ノミネート作品　［I guessed 10/10］
アメリカン・フィクション　American Fiction
	配給：MGM　　監督：コード・ジェファーソン
	Nominees 作品、主演男優、助演男優、脚色、作曲（5部門）
	Precursors WFCA
	オスカーと相性の良いトロント国際映画祭観客賞受賞作。黒人に「惨めで健気で忍耐強い」美を求める社会を風刺。他者を安易に定義づける風潮を大いに皮肉る内容に会員もギクリ？
落下の解剖学　Anatomy of a Fall
	配給：ネオン　　監督：ジュスティーヌ・トリエ
	Nominees 作品、監督、主演女優、脚本、編集（5部門）
	Precursors VFCC
	カンヌ国際映画祭パルムドール受賞。夫の殺人容疑をかけられた女の物語。国際長編映画賞出品から外れて、この部門では有利に？監督、脚本、編集まで押さえる快挙。
バービー　Barbie
	配給：ワーナー・ブラザース　監督：グレタ・ガーウィグ
	Nominees 作品、助演男優、助演女優、脚色、美術、衣装デザイン、主題歌（×2）（7部門8ノミネート）
	Precursors MMCG、HFCS、HCA
	バービー人形を憧れの象徴ではなくステレオタイプを押しつける悪しき社会の象徴として描き出すアイデアがこれ以上ない形で機能。ひょっとすると2023年最重要映画か。でも、あぁ、監督、主演女優敗退。
ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ
	配給：フォーカス・フィーチャーズ　　監督：アレクサンダー・ペイン
	Nominees 作品、主演男優、助演女優、脚本、編集（5部門）
	Precursors GSA、BSFC、DFFCA、IFCA
	オスカー会員はペイン映画を愛してきた。メインストリームから少し外れてしまった者たちを見つめるペインの眼差しには、居心地悪さもあるが、それもまた魅力。ポール・ジャマッティの主演男優賞を後押しする。
キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン　Killers of the Flower Moon
	配給：AppleTV+、パラマウント　　監督：マーティン・スコセッシ
	Nominees 作品、監督、主演女優、助演男優、撮影、編集、美術、衣装デザイン、作曲、主題歌（10部門）
	Precursors NBR、NYFCC、CFCA、PFCS、OFCC、COFCA、AFCS、NYFCO、BOFCA
	1920年代オクラホマ、裕福な先住民オセージ族の不審死事件の中にアメリカの恥部を恐れることなく描き出す。3時間を超える上映時間をものともしない圧倒的演出力。でも、あぁ、主演男優、脚色敗退。
マエストロ：その音楽と愛と　Maestro
	配給：Netflix　　監督：ブラッドリー・クーパー
	Nominees 作品、主演男優、主演女優、脚本、撮影、メイキャップ＆ヘアスタイリング、録音（7部門）
	Precursors None
	作曲家レナード・バーンスタインを取り上げ、しかし伝記映画にしなったのがミソ。その妻ピアニスト・女優フェリシア・モンテアレグレとの関係の中に愛の複雑さを炙り出す。クーパー、好調維持。
オッペンハイマー　Oppenheimer
	配給：ユニヴァーサル　監督：クリストファー・ノーラン
	Nominees 作品、監督、主演男優、助演男優、助演女優、脚色、撮影、編集、美術他（最多13部門）
	Precursors PGA、BAFTA、GGA、GSA、BFCA、LVFCS、AFCC、SLFCA、NTFCA、SFCA、NFCS、CACF...
	「原爆の父」と呼ばれる物理学者ロバート・オッペンハイマーの栄光と挫折、苦悩と葛藤を描く実話ドラマ。公開は日本が最後。世界の心を捉えた物語がオスカーの頂点に立とうとしている。
パスト ライブス／再会　Past Lives
	配給：A24　　監督：セリーヌ・ソン
	Nominees 作品、脚本（2部門）
	Precursors ISA、NSFC、GWNYFCA、UFCA、SFCS、PFCC2
	韓国が絡んだ映画の話題が途切れない。サンダンス映画を魅了、2023年を代表するインディーズ映画の座へ。遂に再会したふたりが奏でる切ないラヴストーリー。脚本賞を狙え。
哀れなるものたち　Poor Things
	配給：サーチライト　　監督：ヨルゴス・ランティモス
	Nominees 作品、監督、主演女優、助演男優、脚色、撮影、編集、美術、衣装デザイン、視覚効果（9部門）
	Precursors GGA、PFCC、IFJA
	ランティモスが新たなる「フランケンシュタインの怪物」を紡ぎあげる。蘇るのは子の脳を移植された女。彼女の性の目覚めを辿る旅の奇妙さ、美しさに抗うのは難しい。エマ・ストーン、二度目の勝利へ。
関心領域　The Zone of Interest
	配給：A24　監督：ジョナサン・グレイザー
	Nominees 作品、監督、脚色、録音、国際長編映画（5部門）
	Precursors LAFCA、TFCA、LFCC
	やはりユダヤ物は強かった。強制収容所のすぐ隣で「普通」の生活を送る所長とその家族の物語。ホロコーストを新たな角度から描く衝撃。国際長編映画賞は受賞王手。

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